子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★☆ 泉質★★★★☆
- 設備★★★☆☆ 雰囲気★★★☆☆
子連れ家族のための温泉ポイント
とっぷりと日の暮れた豊科インターで長野自動車道を降りたのは7時半頃だった。
何故かクリスマスのようにライトアップされた並木を見ながらJR大糸線豊科駅前から国道147号線に入り北上。
柏矢町駅の駅前を過ぎると、とたんに暗い田舎道。
安曇野アートヒルズの前を過ぎて、鋭角に曲がる角が見えてきたら右へ。
裏道の、ちょうどアートヒルズの真裏に安曇野山荘旅館せきえいの看板を見つけた。
どうやらここからさらに細い道に入るようだ。
看板が無かったら全然わからないところだ。
灯りもないような林の中の小道沿いにせきえいは建っていた。
到着時間はちょうど8時。
さっき6時頃に電話して伝えた到着予定時間ぴったりだ。
とりあえずチェックインしようと私が先に車を降りて玄関の戸を開けると・・・
いきなりそこは暖かな光に照らされた食堂だった。
ひと組のお客がテーブルを囲んで夕食を食べている。
一瞬入口を間違えたかと思った。
玄関からいきなり食堂に直結しているとは思わなかった。旅館らしくない雰囲気に驚く。
部屋は今の玄関に直結した食道から廊下をはさんで向かい。
二重になった襖を開けると、家族四人で泊まるには十分すぎるほどの広さの部屋があった。
真ん中に炬燵。
炬燵の上にはポットと茶器と菓子。
何の変哲もない旅館の部屋のはずだが何だか旅館らしくない。
・・・旅館というよりも、親戚の家に泊まりに来たようだ。
部屋の鍵も何しろ入口が襖なのだから非常に心もとない。
もちろん我が家としてはそこが気に入らないというわけではない。
普通の旅館とはちょっと違うなと思うだけで面白がっている。
この宿の特徴として、整体を考える健康敷布団というのがあげられるらしい。
ヘルスロールと呼ばれる変わった布団で、丸めた芯を並べて作られたような形をしている。
この丸めた芯が少々固めで、横になると何だかぼこぼこと妙な感触だ。
さて、安曇野山荘旅館せきえいは温泉旅館だ。
お湯は中房温泉から引いている。
中房温泉は燕岳登山口にある一軒宿の旅館の名で、30以上も湧出口のある湯量豊富な源泉を持っている。
まだ子供が生まれる前・・・10年以上前になるか、泊まったこともある。
日が暮れてから、月明かりを頼りに混浴露天風呂を回った思い出もある。
このせきえいでは、中房温泉を掛け流しで使用しているという。といっても一軒宿の中房温泉の旅館で使っている泉源そのものではなく、そのエリアから湧出する温泉を総称して中房温泉と呼んでいるようだが。
ちなみに実は完全な掛け流しではなく、温度調節のために循環装置も挟んでいる半循環状態のようだが、宿の方の意識としてはできるだけ源泉そのまま使用ということで、掛け流しを行っているという意識のようだった。
浴室に至る廊下の突き当りには「安曇野の味 源泉コーヒー」の可愛らしい看板。
実はこの宿は、洗面所でもお湯のカランをひねると中房温泉の源泉が出る。これは温泉好きにはかなり嬉しいポイントだ。
つまり、部屋でお茶を飲むときも源泉茶にできるわけ。
源泉は飲んでみると、ほんのりと硫黄の臭い。
ぎとぎととする舌ざわり。
そして浴室入口の向かいには非常に古びたマッサージベッドがある。もちろん現役。
「ここのお風呂はねぇ、洗い場の床が畳なんだよ」と私が言うと、「うっそー」と子供たち。
本当だよ。見てみる?
浴室は小ぢんまりとして、使い込んで少し黒ずんだ桧の浴槽が二つ並んでいる。
両方ともほぼ同じくらいの大きさの長方形で、ひとつは縦、ひとつは横向きに設置されている。
そして何故か両方に圧注浴の設備がついている。
お湯はすっきりと無色透明。
肌ざわりはきしきしと引っかかる感触が強く、身を沈めていると浴槽の木の臭いが鼻をくすぐる。
表面の澱みのところに薄く油膜のような何かが浮いているのが見える。
源泉の蛇口は白い析出物がこびりついている。
すっきりさっぱりとした良いお湯だ。
チェックアウトの際に記入してくださいと出された宿帳は、単なるルーズリーフを閉じたファイル。
ここらしいと言えばそうかも。
親切な女将さんは、中房から温泉を引いているこの辺りの宿でも、掛け流しにしているのはうちぐらいですと胸を張っておっしゃった。
確かにとても良い湯で・・・。
宿泊料や立地を考えても、また泊まりたいと思える宿だった。