子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★☆ 泉質★★★★☆ 温度は比較的ぬるめ
- 設備★★★★☆ 雰囲気★★★☆☆ 脱衣所にベビーベッド代わりになるベンチあり
子連れ家族のための温泉ポイント
阿蘇内牧温泉とも呼ばれる内牧温泉は、阿蘇山の北麓、外輪山の内側、JR肥後本線内牧駅から少し北に位置したところに温泉街を形成している。
阿蘇山麓で一番大規模な温泉地なのかな。それにしてはやけに渋い、鄙びているという評判を聞く。
共同浴場は町湯と呼ばれ、10軒以上点在しているようだが、中でも最もマニアックな佇まいだった田町共同浴場は既に廃業している。
全部の町湯が違う源泉だということを知ったのは帰ってきてからなのだが、とにかくこの時点ではどれにしようと決めていたわけではない。適当に温泉街を走っていれば沢山あるうちのどれか一つぐらいは見つかるのではないかと至極適当な計画だった。
内牧温泉は想像していたような温泉街では無かった。
どちらかというと本当に普通の小さな町。
民家とか公民館とか商店とかが並んでいる普通の町。温泉施設が紛れ込んでいるとしてもうっかりと通り過ぎてしまいそうなそんな感じ。
どこだどこだと道の両側を見ながら進んでいくうちに、何だか中心街を抜けてしまったようだった。
どうしよう? 引き返す? と逡巡しているところで共同浴場とも民家ともつかない建物を見つけた。
壁に温泉マークと「立ち寄り温泉 露天風呂(宝湯) お食事処 各種定食」と看板がある。
どこだろう、えーと宝湯。ああ、あったあった、リストに宝湯ってあった気がする。
よくわからないけど、いいんじゃないかな、ここで。露天風呂もあるなんて嬉しいし。
「でも時間は大丈夫?」と夫。
えっ、あっ、営業時間?
内牧温泉の町湯は営業時間がまちまちだ。
朝早くからやっているところ、昼過ぎから入れるところ、朝と夕方は入れるけど昼はお休みのところ。だからこそどこか駄目でも別のところがやっているだろうと簡単に考えていた。
「ここは・・・11時から夜の10時までだね。あっ、まだ11時になってないんだっけ?」
「10時40分」
昔からあるほどほどに大きい温泉地の場合、日帰りで共同浴場などを利用しようと思ったとき、往々にして駐車場に困ることが多い。
ちょうどこの宝湯は裏手に駐車場があるようだ。
時間は早すぎたがとりあえず裏に回ってみた。
裏に回って結構驚いた。
宝湯の看板には食事処の文字もあったが、駐車場のある裏は道路は狭かったものの建物の入り口は立派な日本料理屋だった。
どうも宝湯というのは共同浴場ではあるけれど、どちらかというと「がね政」という割烹料亭の一角がお風呂になっているような感覚なのかもしれない。
駐車場も広くて、とにかくそこに車を入れていたら、ちょうど駐車場内を歩いている関係者らしい女性がいらしたので夫はもしやこの人はと思って話しかけた。
そして、ラッキーにもすぐにお風呂に入れるということになった。
駐車場にいたのは女将さんで、今からお湯を入れるところだったと言う。
「入れ始めたらすぐに溜まると思うから」
やったー。
これはもしかして、独り占めどころか正真正銘の鮮度抜群一番風呂。
それにあっさりすぐ溜まるって・・・湯量豊富なんだな。これも嬉しい。
案内されるまま敷石を踏み店の中に入り、何だか立派な割烹料亭にお風呂道具だけ持って入るのが浮いているなぁと思いながら受付を済ませると、お風呂道具も不要であることが判明した。
「無料でタオルとシャンプーリンスをお貸ししております」
シャンプー、リンスは備え付けと思えば珍しくないが、タオルまで?
入浴料も300円と東京近郊の相場で言ったら破格もいいとこなのに。
個人のお風呂道具のようなプラスチックの網籠に入ったボトル式のシャンプーとボディーソープをお借りして、廊下の先の浴室へ。
お風呂は脱衣所から階段を二段ほど降りたところにあって、四角い浴槽が窓際を占領している。
角に無造作にコップを乗せたたこつぼのようなものが付いていて、そこからドバドバと凄い勢いでお湯が出ている。
お湯は既に浴槽の2/3ほど溜まっていたが、見ている間にどんどん水位が上がる。
そんなに大きなお風呂ではないが、この勢いは素晴らしい。
お風呂のすぐ横、広く取られた窓の外は小ぢんまりとした庭園かと思わせたが、矢印はそこに露天風呂があることを示している。
も、もしや・・・
そうだった。窓かと思ったガラスは引き戸になっていて、庭園の池みたいに見えたのはお風呂だった。何だか笑っちゃう。
露天風呂の方は後から入れ始めたのか、まだあまりお湯が溜まっていなかった。
お湯の温度は比較的ぬるめ。手で湯口近くのお湯に触っても平気。
お湯の色は無色透明なのかもしれないが、琥珀色にも見える。
さらさらとしていそうで、肌触りが少しべたつく感じ。
お風呂の縁が石なのにお湯の成分のせいでまるで金属みたいな質感になっているのが興味深い。見た目の色も金属っぽい。
浴室の貼紙にもあるが浴槽の底に少し黒い砂があって足元が時々じゃりっとする。
たこつぼ型の湯口に乗っていたコップで、お湯を少し飲んでみると甘じょっぱい出汁味で結構おいしい。
露天風呂も入ったけどまだお湯が溜まり切っていないのと、少し小雨がぱらついたのですぐに内湯に戻ってしまった。
ぬるめのお湯は後を引く。
このお風呂を独占している贅沢感を誰かに伝えたいくらいに勿体ない気分。