子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★★ 泉質★★★★☆ 湯温は温めが多い、お湯が真っ黒なので浴槽の深さが判りにくく要注意
- 設備★★☆☆☆ 雰囲気★★☆☆☆ 畳の休憩室のようなものも無く、あまり子供連れの雰囲気ではない
子連れ家族のための温泉ポイント
東急が開発した田園都市線沿線は一時期、中流以上を意識した街作りを行ってきたような印象がある。
そしてまた、やたらと坂の多い街が多い。
川崎と横浜の接するこの辺りでは、なんとか台という地名をつけるのが流行った後はなんとか野という地名がやたらと流行り、なんでもかんでも植物の名前プラス台地の台か野原の野を付けてまわった分譲地が沢山できたが、もうその「台」からして坂の多い地形を彷彿とさせる。
田園都市線宮前平駅で降りて北口から出ると、すぐにカーブを描く道路は見上げるような坂に繋がっていて、ああここもやっぱり坂かと思った。
坂道には宮前平源泉 湯けむりの庄はこちらという看板が目立つようしつらえてあるので迷わない。
宮前平の温泉は、駅から徒歩でも4分という好立地にあった。
一年半ほど前の夏、久しぶりに会う学生時代の友人宅を訪ねて、宮前平の温泉のことを知った。
田園都市線沿線である横浜市青葉区に住む彼女の夫は建築関係の仕事をしていて、ちょうど宮前平に作る日帰り温泉施設の現場に行っているという話だった。
あそこに温泉ねぇ、というのがその時の感想。
昔、同じく田園都市線沿線で働いていたことのある私にとって、なんだか意外な気がしたからだ。
まあ今は関東近郊どんなところにも日帰り温泉がある。
深く掘りさえすれば温かいお湯が湧く。
東京や神奈川の辺りでは色もはっきりした黒か茶色だ。
黒ければ重曹っぽさが勝り、茶色ければ塩っぽさが勝るだろう。
宮前平源泉 湯けむりの庄はマンションの隣、住宅地の中にあって、入口からぱっと見ただけでは小ぢんまりとした施設のように思えた。
しかし入ってみると判るが、中では母屋と離れが連絡通路で繋がっており、思ったより広いことが判った。
入館料が仙川店、すすき野店といった他の湯けむりの里グループと比較しても、また他所のスーパー銭湯系日帰り温泉と比較しても高額である分、そこここで高級感を演出しているのが判る。
例えば休憩室はよくある畳の大広間などではなく、パーソナルテレビのついたリクライニングチェアーであったり、大人料金の入館者にオプション無しでタオル、バスタオル、館内着を貸し出したりという辺りだ。
またこれは湯けむりの里全体の傾向だが、岩盤浴にも力を入れている。
今回私は体験しなかったが、天井やスチームに工夫したアトラクション岩盤浴となっている。
浴室のロッカーは縦長で、入浴施設というよりはスポーツクラブのそれのようだった。
内風呂は温泉を張った浴槽と、水道水を沸かした圧注浴の設備など。
特筆すべきはフィンランド式サウナのロウリュなのだが、残念ながら時間が合わなかった。平日は午後のみ3回ぐらい、休日はもう少し回数が多くお昼前にも行うようだ。ロウリュというのは熱した石にアロマ水を掛けて蒸気を発生させるスチームサウナの一種。
露天風呂は正面に岩風呂が二つ。内風呂とガラスで隔てられた辺りに四角い炭酸琥珀湯。この他に竹垣で仕切られた奥につぼ湯と寝湯が、反対側につぼ湯より少し大きい親子つぼ湯と深いたち湯などがある。
露天風呂の一段高い所にある浴槽が唯一かけ流しの源泉風呂。他のお風呂はみな循環しているようだ。
お湯はかなり黒く、上から見た分には墨のように見える。
入るとコーヒー程度の濃さであることが判った。パンの焦げたような臭いが強く、朝ごはんを食べずに来るとお腹がなってしまいそう。
それほど強くはないが、指の間をにゅるにゅると滑るような感触がある。にゅるにゅるはするが、相反して肌に引っ掛かるようなきしつきもある。またオイリーな感触もあり、なかなか複雑。
寒い冬の日で外気温はかなり低かったが、お湯の温度が40度前後と比較的低めに設定してあるにも関わらず、すぐに温まって長くは入っていられない。
その一方、出るとさっと冷えてしまうような印象の湯だ。
塩分の温まりと重層の冷えがちょうど逆に働いてくれれば良いのに。
かなり泡立ちやすい湯のようで、源泉かけ流しの浴槽も、その他の浴槽も表面に白い泡が沢山浮いている。湯中でも少し泡がつく。
しかし、一番の泡付きと言えばやはり炭酸琥珀湯だろう。
これは温泉の源泉に炭酸ガスを注入して加工したお湯を入れた浴槽だ。これだけならよくある手法かもしれないが、湯けむりの庄では浄水器などに使われる中空糸膜を通して炭酸ガスを溶かしこんでいるということで、より細かい状態で湯中に炭酸ガスが融けこんでいるというのが売りのようだ。
この炭酸琥珀湯、何気なく肩までつかると、瞬時に心臓がドクンドクンとなるのが実感できる。
お湯自体はおそらく炭酸ガスが気化しにくいようぬるめに設定してあるのだが、そうっと入った方が良いかもしれない。
泡も本当にすごく、ころころと体の表面を転がるのがくすぐったい。しばらく入っていると、自分が人間ぷちぷちか、全身にいくらの卵を植え付けられたような気がしてくるぐらい。
全体的な感想としては、スーパー銭湯としてはちょっと高めだが、逆にこの料金で、バブル期に都内にできたゴージャス温泉並みの設備が楽しめると思えばリーズナブルなのではないだろうか。
従業員の教育も行きとどいているように思われた。
但し、隣接するマンションにやたらと「スーパー銭湯反対」の幟がはためいていたのが気にならないと言えば嘘になる。