子連れ家族のための温泉ポイント
- 湯温★☆☆☆☆ 泉質★★★★☆ 温度は相当熱め
- 設備★★☆☆☆ 雰囲気★★☆☆☆ お湯が熱いことを含めて子連れには向かないかも
子連れ家族のための温泉ポイント
箱根での取材の帰り、まだまっすぐ帰りたくない気がしていた。仕事を離れて純粋に温泉に入りたい。お風呂の種類がいっぱいある必要はない。できれば入浴料が安いところ。
強羅駅で乗った箱根登山鉄道は観光を終えて帰路につく乗客で混んでいた。このままこの赤い電車の座席に座っていれば、やがて箱根湯本駅に着き、そこでお土産を買ったらロマンスカーに乗って旅は終わる。それにあらがいたい気持ちがあって、あても無いままスマホのマップを起動した。
さっき宮ノ下駅を出て、もうあと停車する駅は大平台と塔ノ沢だけ。大平台駅周辺をピンチアップして、なんとなく「姫之湯」の文字が目に留まった。ここに寄ってみようかな。駅から歩けそうだし。
夕暮れの上りホームで降りた客は、私の他には2人だけ。ぎっしり乗った観光客はみんなまっすぐ終点・箱根湯本駅まで向かうようだ。スイッチバックがあるので行き止まりになった線路が郷愁を誘う。
駅からの道は不安だったが、ちゃんと駅前に案内板があり胸をなで下ろした。日が落ちて急速に辺りが暗くなる。方向音痴なので、入り組んだ場所にある目的地に向かうと迷いやすい自分、細い道を通ったがなんとか間違えずに到着。
姫之湯は大平台の温泉組合が運営している。大平台自体が箱根ではあまりメジャーな温泉地ではないので、大型のホテルなど思いつかないが、小規模な宿や個人宅に配湯する共同源泉を使った共同浴場がここにあたるようだ。箱根の日帰り温泉としては550円と破格の安さ。
思いのほか立派な駐車場もある。佇まいも悪くない。鄙びた雰囲気に見えるのは黄昏時だからかもしれない。
暖簾をくぐって入ると受付で初めてか聞かれ、初めてだと言うと「熱いけど大丈夫か」と聞かれる。大丈夫、大丈夫。
入って正面に適当な休憩スペースがあり、おやじさんが一人、豪快に寝ていた。ロッカーは戻らない100円コイン式。地元の人の利用が圧倒的に多いようで、ちょうど入れ違いに上がってきたおばあちゃんに、「今日はいい湯だよ、本当にいい湯だよ」と何度も告げられる。
湯気の中に丸い浴槽。非常にシンプル。周りにカランがあり、ボディーソープは備え付けがあるが、シャンプーは必要なら受付で購入するシステム。
掛け湯をすると確かにあっつい!箱根では例え高温の源泉でも41度程度に調整してあるところが多いので、これだけ熱いままで使う施設は新鮮に感じる。でもぬるめの温泉にばかり入っていたから熱く感じるだけで、非人間的な熱さじゃ全然ない。せいぜいきりっと43.5~44度。久しぶりの熱い湯に体が引き締まる感じ。
湯の花などは見当たらない無色透明のお湯で、それほど強くないきしつき。冬場なので浴室の湯気はものすごくて全体が霞んで見える。においは石の甘いにおいに少し塩素消毒のにおい?湯上がりは指先がかさつくが、寒い日にはとても嬉しい、温まってそれが長持ちするお湯。
脱衣所には「加水掛け流し」かつ「循環装置使用」と矛盾することが記載されている。別に循環が悪とは思わないが、循環していて掛け流しと言い切るのは違うと思う。実際にここは湯口の他にも浴槽内からもお湯を注入している。大平駅前の表示板にも「掛け流し」と明記されていたが、循環装置を使っているなら、自分の中ではここは非掛け流しに分類する。
お湯もお値段も良いところであるのは確か。熱いお湯さえ耐性があるならぜひお勧めしたい。お風呂から上がればもう外は真っ暗だ。十分満足したので今度こそまっすぐおうちに帰ろう。