子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★☆ 泉質★★★★☆ お風呂によってはかなり熱いので注意
- 設備★★★★☆ 雰囲気★★★★★ 小天狗の湯のみ脱衣所にベビーベッドあり
子連れ家族のための温泉ポイント
夏油(げとう)というのは昔から難読漢字の温泉として知られていたけれど、今は「呪術廻戦」の登場人物名のおかげで誰でも読めるような気がする。
もともとはアイヌ語の崖のあるところ「グット・オ」がなまったとか、冬に雪で入れないから夏湯と書かれていたのがが夏油に書き間違えられたとかそんな由来が外の壁に張り紙してあった。どちらにせよ諸説あるらしい。
ここは来たかったけどなかなか機会がなかった温泉で、数年前のGWにも泊まろうとしたが、この辺りを通過するタイミングと営業開始の日付が1日合わなかった。冬季休業の宿なのだ。
混浴露天風呂があることを知っていたから、できれば泊まって女性専用時間にゆっくり入りたかった。それに自炊部(湯治棟)があるから安く泊まれそうだったし。
それで公式サイトの自炊部申込フォームから予約したのだが、「ご予約申し込み後、当社担当より確認の連絡を差し上げます。」とあって実際に自動返信がちゃんと届いたのに実際はまったく予約ができていなかった。なんともいい加減なところではあった。
そして実際に行ってみると、令和の時代にこんな佇まいが残っているなんて奇跡だと感嘆するような宿だった。なんなんだこれは!昭和初期にタイムスリップしたと思っても違和感ないぞ。いつまで残っていてくれるかな。
自炊部は「夏油館」「紅葉館」「経塚館」「薬師館」と4棟あって、私たちが泊まったのは個室に冷蔵庫付きの「夏油館」だった。一番高い「夏油館」でも1泊2,640円、寝具は無料サービスだった。やっすっっ。
さらに炊事場のコンロ代も無料。これは珍しい。他に電子レンジ、トースターもあり、使えるかわからないが炊飯器も置いてあった。
私たちは2泊と短い滞在だったが、常連さんなど部屋の入口に暖簾や簾をつるしてカスタマイズしていたりして、私の知っている温泉宿と何か違うと驚きと楽しさを覚えた。
お風呂は7ヶ所。内湯×2と露天風呂×5。内湯は男女別で、露天風呂は女性専用1つ。残りは混浴で女性専用タイムあり。
気づいたら女性専用タイムだという放送が入ったので、まずは露天風呂へ。「夏油館」と別館の間の道を下るとまず「真湯」があり、橋を渡ると「女(目)の湯」。この2つは16時~17時が女性専用なのだ。
「女(目)の湯」
最初に入ったのは「女(目)の湯」。脱衣する場所が服をぬらさずに脱ぐのに苦労するような作りだったが、慣れた人は橋の対岸の「真湯」で脱いでバスタオルや湯あみ着で移動しているようだ。
「女(目)の湯」は小ぢんまりとして、川から近いが囲われているので眺望はない。しかし足元からボコボコと泡が出ている。岩の下から直接湧いているのだ。泡を探ると岩がぶるぶると振動している所あり。お湯はかなりぬるめ。触っても熱くない。
お湯の色はほぼ透明ながら澄まし汁のようなわずかな濁り。肌触りは不思議な感じ。引っかかりながら滑る相反する感触。においは木材臭とは違う甘い植物臭。上がる時ちょっと寒かった。
「真湯」
次に「真湯」。ここは川が見えるが入りながらは難しい。でも浴槽から上がって手すり近くまで移動するとよく見える。温度はきもち熱め適温ぐらい。ごくわずかな白濁りがあり、肌触りは何かベールを一枚まとったような感じ。でもなんとなくお湯が黒く見える部分もあり、これは浴槽内が硫黄成分で黒ずんでいるからだろうか。
においは植物臭もしたが、湯口の正面に行くとはっきりしたゆで卵臭。
湯口の熱いお湯とは別に、ぬるいお湯が出ているところもあるけど、溜めてあってそのあとは湯舟に入らず捨てられている?別源泉?こちらはじゅわっと炭酸水素塩泉っぽい感じで金属交じりの味がする。
そのあと足もとを靴からサンダルに履き替えて、夏油館からまっすぐ中央の通りを直進した先にあるお風呂群へ。こちらには混浴の「大湯」、同じく混浴の「疝気の湯」、そして女性用の「滝の湯」がある。時間差でこちらの混浴も女性専用になるのだ。このままはしごしちゃえ。
「大湯」
まず「大湯」だが、猛烈に熱い。チェックインの時に元湯夏油のご主人に「熱いけど入ってほしい」と言われたが、入りに来た女性はみんなあまりの熱さに掛け湯をして逃げるか、足先をちょこっと入れて諦める。しかし私は入るぞ!
入ってしまうといやいや意外。掛け湯したほどには熱く感じない。入れる!入れるぞ。1分ぐらいは入ったままでいられるが、自分で怖くなり出る。いい気になって入っていると倒れるかも。
甘い植物臭。温度を測ってみると脱衣所に近い側が47度、奥の方は48度もあった。後で女性専用タイムが終わってから夫に熱いお湯が好きでしょ?とけしかけたが、彼は入りに行ってやっぱりムリと言って帰ってきた。
「疝気の湯」
逆に「大湯」の近くにある「疝気の湯」はぬるめ。「女(目)の湯」ほどではないがかなりぬるい。そしてここは川から丸見えの露天風呂でやはり足元自噴。
浴槽中央に金属の四角い蓋がしてあって、その穴や周囲からボコボコと湧いている。金属板は触れると少し熱く、周辺からも泡が出てくる。少しキシつきがあり、ゆで卵臭。泡が背中をコロコロと転がっていく。
「白猿の湯」
夜は本館内の内湯「白猿の湯」へ。もう一つの内湯である別館側の「小天狗の湯」はシャワーの出が悪いとご主人が言っていたが、こちらの「白猿の湯」も2つしかシャワーがないのでみんなが入りに来ると少し足りない。両方埋まっていたので先に掛け湯して湯舟に入っていたら、ちょうど後から来た人に先に取られてしまった。しょうがないけどのぼせそう。
ここはライトが弱いので薄暗いが、湯口が鍾乳石みたいに析出物が育ちまくっていて、思わず触っちゃう。においはわずかなゆで卵臭。あまり滑らない手触りで、温度はちょうど良かった。
「滝の湯」
翌朝入りに行ったのは、「大湯」「疝気の湯」に行く途中にある「滝の湯」だ。ここは唯一終始女性専用のお風呂。湯小屋になっているので露天風呂というより内湯と言うべきか。
完全に浴室は囲われていて、窓から見下ろすと下方に川は見える。うっかりすると「疝気の湯」まで見えちゃう。
浴槽は2つに仕切られていて、あつ湯とぬる湯として温度を変えている。湯口は1つだけで、あつ湯の湯が少しだけぬる湯に流れ込むようになっているので温度差が生まれるのだ。先客からあつ湯は「大湯」なみに熱いと聞かされて、ちょっとビビッていた。また朝一で来たらぬる湯にお湯が入っていなかったこともあるそう。ちなみにこの時はあつ湯47度、ぬる湯37.8度だった。なかなか極端だな。
まずぬる湯へ。表面に散る白い多量の粉状の湯の花。一部は結晶のように集まっている。これは条件によっては膜が貼るタイプのお湯か?肌触りはうっすらとジェルの膜が身体に出来たような、ベールをまとったような。
あつ湯は「大湯」のようですごく熱いのに入れば入れてしまう。熱いお湯に入ると私の場合はひざ下が猛烈に痛むのだが、そういうこともなくすんなりと。ただし上がる時には一気に熱さが襲い掛かってくるので注意。湯口はふんわりゆで卵臭。しかしここのお湯は湯上りさっぱりするな。
「小天狗の湯」
最後は2日目の夜に入った「小天狗の湯」。ここは旅館棟「嶽館」と「駒形館」にある内湯。お風呂のつくりとしては一番新しくて綺麗かもしれない。なのに今ちょうどボイラーが故障しているのでシャワーに難ありですっかり穴場のお風呂になっていた。
新しいとはいっても、そこは夏油温泉だから。既に浴室の床はミニパムッカレの出来上がり。ここは析出物ガリガリタイプか。うろこ状に固まって凄いことに。
お湯の色などは夜なのでいまいちよくわからないが、透明っぽい。甘い石のにおい。手触りは滑らか。その辺も昨日から入っている元湯 夏油の他のお湯とちょっと違う印象。温度は適温でここのお湯はよく温まるな。ちなみに浴槽は43度と万人向け。湯口は57.8度でかなり熱い。ちなみにシャワーが今使えないせいか、シャンプーの備え付けはなかった。
なんか勢いで「元湯 夏油」の全てのお風呂について長々と書いてしまった。お風呂以外についてもう書くようなスペースはないのだが、また機会があったら泊まりに行きたい。自炊部で自炊もできるけど、当日の朝なら夕ご飯も注文できるというゆるさも魅力だよ。本当に適当に住むように滞在できるところ。いつまでもこのまま残っていてね。