子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★☆ 泉質★★☆☆☆ 塩分が濃いので長湯に注意
- 設備★★★★★ 雰囲気★★★☆☆ 脱衣所にベビーベッドあり
子連れ家族のための温泉ポイント
日本で一番濃い温泉は兵庫県の有馬温泉の金泉。濃いだけでなく、日本三大温泉、日本三古湯、日本三薬湯の全てにランクインするここは、知名度、歴史ともに温泉地としては他の追随を許さない王者的存在。
その有馬温泉の中でも、金泉、自噴泉、そして自家源泉という条件を満たしているのが唯一こちらの「亀の井ホテル有馬」で、以前はかんぽの宿だったところだ。かんぽの宿から亀の井ホテルにリブランドしたタイミングで取材に伺う機会があった。だから、この記事で使っている写真も取材時に特別に撮らせていただいたものが混ざっている。
この宿の温泉で驚くことの一つは源泉の近さだ。本当に建物のすぐ横で湧いている。つまり湧出地とお風呂との距離もめっちゃ近いということ。この泉源は3階から誰でも窓越しに見ることができる(湧いているのは300m下)。
海水濃度の約1.3倍あるという源泉は、とにかく配管泣かせ。パイプがすぐに詰まり、頻繁に交換する。泉源の近くには交換用のパイプが詰んである。詰まってくるとパイプの重さは二倍ぐらいになってしまうそう。
湧きたての源泉を味見させてもらったが、ものすごい濃さ。強い金属臭と猛烈なしょっぱさ、苦さ。まさに薬かと。
この貴重な温泉を守り、メンテナンスしているのは湯守の田中さん。彼の知識と経験と熱意あっての現在の亀の井ホテル有馬の温泉だ。彼、または助手が毎日お湯の状態と浸透圧のチェックを行っている。
阪神大震災時はこのオレンジ色のお湯が白濁したというお話も聞いた。カルシウム分が揺さぶられて出てきたのだろうというお話。
ところでこの温泉にも悩みがある。濃すぎるのも特徴だが、温度も非常に高い。有馬温泉に高温の温泉が湧く理由は未だ謎に包まれているが、ともあれ亀の井ホテルの自家源泉「愛宕山泉源」は96.6度もある。沸騰しそうなレベル。
なので今度はこの温度を人が入れる適温まで下げなくてはならない。簡単なのは冷水を足すことだが、「亀の井ホテル有馬」では、まず泉源から数メートル密閉しない樋に流し、少しでも自然に温度が下がるようにする。さらに湯量を絞る。これで最低限の加水で済む。
しかし裏を返せば、せっかく近くで湧いているのに空気に触れさせて劣化させ、せっかく濃いのに加水してしまうのかという気持ちも否めない。でもそこは田中さん曰く、万人に入りやすいお風呂にすることが良いのだと。
田中さんのお話は全てとても有意義なものであったが、やはりこの点だけは「勿体ない」と言わざるを得ない。
源泉に触れさせて味見させてもらった身としては、浴槽内のお湯を比較すると、あの強い金属臭はかなり飛んでしまい、しょっぱさも弱くなっている。もちろんこれでも、源泉そのもののパワーを知らなければ、じゅうぶん濃くて新鮮なお湯に感じられるのだが。
お湯の色は人が入ると濁りが巻き上げられてオレンジ色になることもあるというが、入った時は茶色を薄めたような色だった。
このほかに、源泉では金属のにおいの下に押し込められていた油っぽいにおいがし、少しすべすべする肌触りがある。
この源泉をわが子のように気に掛ける湯守の田中さんの気持ちがひしひしと伝わるような取材だった。本当にありがたく貴重な機会だった。