子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★★ 泉質★★★★☆ 湯温は温め、泉質は特に刺激なし
- 設備★★☆☆☆ 雰囲気★★★☆☆ 赤ちゃん向けの設備は特になし、子供は館内の雰囲気を怖がるかも
子連れ家族のための温泉ポイント
群馬県の宮城村方面から、赤城山を登り始めると、道を大きな鳥居がまたいでいるのが見えるだろう。
この先の南面山麓には赤城の神をまつった赤城神社があり、さらに上っていくと滝沢温泉、忠治温泉、赤城温泉と次々表示が現れる。
日光の神に追われて老神温泉を発見したという伝説でも知られる赤城の神は、神世の時代、東国すなわち主に群馬を支配したとされる上毛野君一族がまつった由緒正しい神である。
しかし、この赤城温泉総本家には、どうも赤城の神だけでなく東南アジアやアフリカの見知らぬ神々もまた、素知らぬ顔でくつろいでいるかのように見受けられた。
というのは、館内のあちこちでエキゾティックな神像、古民具、祭事道具などが不思議な調和を保って各々に自己を主張しているからだ。
赤城山山頂に至る道は通行止めで、赤城温泉で道は行き止まりとなっていた。駐車場に総本家の看板があるのだが、思わず絶句するようなオンボロぶり。どんな宿だろうと少し心配になる。
車を降りて細い道を行けば、正面に総本家。なんと形容したら良いのだろう。独特の雰囲気。
がらがらと引き戸を開けて、ごめんくださーいと声を掛けても、さっぱり受付に人が出てくる様子は無い。
仕方が無いので靴を脱いで上がり、廊下を覗き込めば…これまた異様なスペースが待っていた。
宝川温泉の民芸骨董品が並んだあれも凄かったが、ここはもっと無国籍というか多国籍というか、不動明王とバリダンスが入り混じったような感じ。
もう一度、すいませんと声を張り上げれば、ようやく厨房らしい場所から返答があった。女将さんらしい女性が出てくる。
露天風呂は階段の上に、内湯はさっきの怪しい廊下の奥にあるという。
混浴の露天風呂の方に行ってみることにした。
途中の階段にもアフリカだか東南アジアだか日本の骨董品だか判らないグッズが所狭しと並んでいる。
目を見開き歯をむき出し頭から翼を生やした異国の神(鬼?)を見て、4歳の次女は怖い怖いと言う。こういう雰囲気の温泉は初めてだ。
外に出て数歩歩いたところにいきなり唐突に露天風呂がある。東屋風の屋根もついているし、崖っぷちなので眺めも良い。何がこんなに唐突に思われるのだろうと考えると、そうだ、脱衣所が無いからなのだと思い当たる。
手前の石の上に脱衣籠が無造作に積んである。身を隠すところも何もありゃしない。
それほど大きい露天風呂ではない。2、3人用といったところか。
気持ちぬるめのお湯は茶色の混じった緑色の濁り湯で、そう、鉄の臭いといい、昨日のつま恋温泉にとてもよく似ている。濁りは激しく底はまったく見えず、さらに茶色い粉のような湯の花が沢山舞っている。
金気臭はつま恋温泉よりちょっと劣化した感じだが、味はつま恋よりずっと甘い。でも基本的には鉄入りの気の抜けた炭酸味。
どこからお湯が出ているのだろうと不透明な湯の中を探れば、パイプが斜めに浴槽の底近くまで延びていて、そこから適温の湯が出ていた。たぶん空気に触れさせないで浴槽に注入するためと思われるが、何でこんなに斜めに風呂の端から端まで長々とパイプが伸びているのだろうと可笑しくなってしまった。
かなりきしきしする。でも肌あたりは柔らかい。
湯上りは温くてもよく温まり、肌も相当すべすべする。
春3月、まもなく赤城南面には千本桜が咲く季節。今宵は何処の国の神が、総本家で湯浴みしているのだろうか。