子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★☆ 泉質★★★★☆ お湯は適温、泉質は問題ないが滑りやすいので注意
- 設備★☆☆☆☆ 雰囲気★★★★★ 設備は何もないが、貸切利用できるので小さい子連れにも良いかも
子連れ家族のための温泉ポイント
こんな所に日帰り温泉が、大露天風呂が、貸切風呂があるとは知らなかった。それもこの9月から一般の人も入れるようになったばかりの。
たまたま温泉好きの友人たちと一緒にかつて知ったる道の駅六合の隣にある食事処 野反ライン山口で昼食を取ったところ、こんないい温泉があるんだよと紹介されたのだ。
「大きな露天風呂だって」
「源泉どはどばだって」
白砂川に沿って山道を登っていくと、時折鮮やかな紅葉が目に入るが、もうほとんど木は葉を落としている。道の先には野反湖があって、そこはもう分水嶺の先、野反湖の水は太平洋ではなく日本海側に注ぐはず。
国道405号線は、花敷温泉手前で野反湖方面に向かう道と、草津方面に向かう林道とに分かれる。
その花敷よりさらに手前、国道沿いに山の中には不釣り合いな小洒落た豆腐屋がある。
京塚温泉に入るには「鍵」が必要で、鍵を管理しているのは野反ライン山口と繋がりのあるその豆腐屋なのだった。
京塚温泉は豆腐屋から車で1分。
豆腐屋とガソリンスタンドのコスモ石油の間の角を曲がる。
着いたところはただっ広い空き地のようなところだった。
目の前に不揃いな竹垣を組んだ塀がありそこにぽつんとドアが付いている。「しゃくなげ露天風呂 無断入浴禁止」と書かれた木の板が張られていて、何故か「入場券入れ」と書かれた郵便受けが付いている。いや、本当にタダの郵便受け。一般家庭の門の所に取り付けられているような赤いやつ。
よく見ると竹垣の左隣にはもうひとつドアが付いているようだ。
そして竹垣の右隣にはプレハブのような小屋。
こちらは基本的に地元の人専用。月に3,000円払い、交替で清掃業務を行うことによって入浴の権利を得るという。
豆腐屋で借りた鍵を差し込んで露天風呂のドアを開けた私たちは思わず感嘆の声を上げてしまった。
「こりゃ凄い」
野反ライン山口に置いてあった紙に、50人入れる大露天風呂と書いてあったが、広さよりも何よりもこの開放感。
ちょうど白砂川を見下ろすロケーションで、眼下に谷川、正面に切り立つ山肌、そして冬も間近い寒々しい荒涼とした景観が待っていた。
「えー、これ、本当に貸し切り状態でいいの?」
みんなびっくりなのだ。
お風呂は岩風呂で、吹きさらしだが周りに簡易な屋根を付けた脱衣棚がある。
脱衣棚の足下は簀の子が敷いてあって、他に一休みできるようなベンチもある。
寒い時期は少し辛いが、一応基本的な設備は整っている。隅の方に個人の持ち物とも思われるようなボトル入りのシャンプー等が置いてある。
ところでこの露天風呂、混浴なのだろうか?
もう一つの鍵で隣のドアを開けてみると、どうやらこちらが女湯兼貸切風呂らしい。貸切風呂と言っても鍵がないと入れないという点では大露天風呂も大差ないのだが。
お湯は熱すぎずぬるすぎず、ちょうど良いくらいだった。外気温が低いので、のぼせずにゆっくり入っていられそうだ。
お湯の色は僅かに緑色がかって白濁して見える。底の岩に苔が生えてきているのかぬるりと滑るので注意しながら入った。
パイプからどぼどぼお湯が溢れていて、私は硫黄の臭いと金属の臭いの他に、青竹のような臭いを感じた。揮発してくる成分がつんと竹のような刺激臭に感じる。
とにかく全体としてどこの温泉に似ているとも言いきれない複雑に混ざり合った臭いだった。とても強いという臭いではないのに、ブレンド具合が微妙というか。
味もゆで卵プラス金属。
肌触りはきしつく。
温まり度はそれほどでもない。
私たちは貸切を良いことに、女湯だけでなく男湯の大露天風呂にも入らせてもらった。
目の前の雄大な景色に目を奪われる。
今でこそ葉も落ちて初冬の装いだが、もし紅葉真っ盛りの時期だったら稀にみる絶景風呂になること間違い無し。
ちょうど斜面の途中に九十九折りの道路があるのか、単独のライダーがエンジンの音を響かせ登っていくのが見えた。
「あのライダーくん、ぜーったいこんなところに露天風呂があるって知らないよね」