子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★★ 泉質★★★★☆ 湯温はぬるめ
- 設備★★★☆☆ 雰囲気★★★☆☆ 脱衣所にベンチあり
子連れ家族のための温泉ポイント
霧積温泉と聞くと、反射的に「母さん僕のあの帽子どうしたでせうね」、森村誠一「人間の証明」が頭に浮かぶ。映画が流行った時に原作は読んだ記憶がある。映画の方は見ていない。
「人間の証明」は森村誠一が西條八十の詩「帽子」に出てくる一節に感銘を受けて執筆した小説で、作中においてもその詩は重要なヒントとなり、実際に場面として現地も登場する霧積温泉。
ここは昔、別荘地として大変栄えていたが、明治43年の山津波で大きな被害を受け、さらに鉄道の開通などで賑わいは軽井沢に移っていってしまったと、行きの送迎車の中でご主人に伺った。
それでも1971年に親族(兄弟)が経営する「きりづみ館」が建ち、2012年までは2軒で営業していたが、現在は「金湯館」のみを残す。
アクセスはなかなか難儀で、一般車両は乗り入れ禁止なので駐車場から徒歩20分歩くか、お宿の送迎車を頼むしかない(宿泊者専用)。なおこのときマイカーを停める駐車場が元きりづみ館の跡地だ。当時はここまで金湯館のお湯を引いていたのだ。シンボルの水車が今も名残のように残されている。
送迎車を下りてからもまだつづら折りの階段を下りて行かなくてはならない。首都圏から近い群馬県でもとびきりの秘湯と言えよう。
さて、お風呂は男女別の内湯のみ。けっして浴室が広いわけでもなく、眺めが良いわけでもない。ただひたすら鮮度の良いぬるいお湯が掛け流されているだけである。これがいいんだと思う人には最高の環境だと思う。
湯口は38度、湯船で37.5度と、ほんのり温かい。最初は肌を滑りつつ、キュッと止まる。気が付くと表面に細かい泡が付いていて、払うとフワッ、ファサッと散る。お湯はほぼ無色透明。白いふわりとした小さな湯の花が舞っている。
ぬるいけど、体温よりは温度が高いので、入りっぱなしとはいかず、時々上がって休まないとならない。肌はどんどんサラサラになっていく。
蛇口はどうなっているのかわからないが、2つぐらいひねってみたがぬるい水しか出ないので、湯船のお湯をすくって髪を洗った。
においは淡いかほんの少しゆで卵のような硫化水素臭も感知する。湯口の結晶が宝石の鉱脈のようだね。
朝風呂から上がると、お風呂の方に向かって廊下をとても高齢の女性が歩いてきた。歩みがあまりにゆっくりで、なかなか目的の場所に着かないのではと思ったほど。すれ違う時に「もうお風呂に入ったの?」と聞かれて「はい」と答えると温かい口調で「良かったわね」と。
宿の大女将だった。そしてこれは1年半前の記録だけど、お宿のFacebookを見ていたら、去年鬼籍に入られたと…。