子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★☆ 泉質★★★★★ 湯は適温、刺激なども特になし
- 設備★★★☆☆ 雰囲気★★★★★ 脱衣所にベビーベッド代わりに使えそうな長椅子有り
子連れ家族のための温泉ポイント
智恵子抄には、安達太良山の上に出ている青空が、智恵子の「ほんとの空だ」とある。
東京に住んでいて、建物と建物の間から毎日狭い空を見上げているからこそ、空を探しに旅に出たくなるのかもしれない。
1900年にも火口にあった硫黄精錬所を吹き飛ばし多くの死者を出す噴火を起こした安達太良山の山麓には、岳温泉、沼尻温泉、土湯峠の秘湯群など今も沢山の温泉が湧いている。
いつも福島に旅行に来るときには、安達太良山より西の裏磐梯や猪苗代湖に向かうことが多く、地図を見ながらそう言えば二本松側のことは何も知らない自分に気が付いた。
そして前日になって決めた急な2泊旅行で、塩沢温泉湯川荘を選んでみた。
ここは安達太良山の塩沢温泉登山口にほど近い、湯川渓谷沿いにある昔ながらの温泉宿。
二本松ICから車で25分。
温泉好きよりむしろ登山客の方に名が知られているかもしれない。
外観はあまりぱっとしないが、部屋は広く綺麗で、お風呂の佇まいは素晴らしい。
岩風呂と桧風呂とあってどちらにも露天風呂が付いている。
岩風呂より桧風呂の方が好きだ。深さも木の肌あたりも良くて和めるお風呂だ。
男女入れ替え制なので日帰りだとどちらに当たるかよく判らない。
露天風呂は内湯のドアを開けて出るようになっている。
少し錆びかけた朱塗りの橋が架かっている。
この橋も見る人によっては興醒めかもしれないが、私は気にならない。
それより露天風呂のロケーションはまた素敵だった。
お風呂は岩で小さいもので、2、3人でいっぱいだろう。男湯との境には木の壁があってランプがひとつ下がっている。
囲いもなく森の中にあるようなお風呂だった。
楓や山毛欅の木に囲まれて、緑一色の今もいいけれど、紅葉したらさぞやと思わせるロケーションだ。
お湯は沢水のような、はたまた薄い汚水のような臭いが少しする。これが元々のこの温泉の臭いなのかもしれない。
実は前日はプールのような塩素臭が強くて少し残念だった。
内風呂も露天風呂も底から吸引しているが、吸い込む力は弱い。特に露天風呂は外に溢れる分も多そうだ。
源泉温度は30度そこそこしかないと言うことで、循環するのはやむを得まい。
肌触りきしきし。
透明ながらごく僅かに白っぽい濁り。
急にくるものはないが、のんびり出たり入ったりしているとぬるめなのにのぼせてくる。
木々の緑が目に眩しい。
どこからか沢音が聞こえている。
「ほんとの空」があるべき安達太良山麓に来たものの、雲が広がり青空はのぞめなかった。
その代わりに、梢が空を覆い隠すような露天風呂を見つけた。
塩沢温泉は近隣のペンションなどを併せて塩沢温泉郷と称するが、「他の宿はみんな沸かし湯です。温泉を引いているのはうちだけ」と最後に女将さんは教えてくれた。