子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★☆ 泉質★★★★☆ 浴槽は小さめで深くはない。湯は適温。
- 設備★☆☆☆☆ 雰囲気★★★☆☆ さながら民家の浴槽のようだが、湯はかけ流しでとても良い湯
子連れ家族のための温泉ポイント
岩木山麓にはたくさんの温泉が湧いている。
嶽温泉、岩木山温泉、百沢温泉・・。数ある中で湯段温泉を選んだのは、1992年5月1日 JTB日本交通公社出版事業局発行「旅」という雑誌の「名湯400選」という特集の中で、スパライター坂本衛氏(「超秘湯」の筆者)が、「独断と偏見で特にお勧めしたい」「辺鄙で素朴な湯治場」「葦が生い茂る中に共同浴場(今は無い)とそれを取り囲むように4軒の旅館がある。近づくにつれてわけもなくもの悲しくなるような淋しいところだ」と書いてあるのを読み、そんな雰囲気のところにぜひ行ってみたいと思ったからだ。
相馬村を出て、鰺ヶ沢街道を看板に従って左折。岩木山を背にしばらく走ると、ぱらぱらと温泉付き民宿のような建物が目に付くようになる。湯段温泉ゆだんの宿と書かれた看板通りに右に曲がれば、4軒ほどのこぢんまりした旅館がある。
ここが湯段温泉の中心地だ。坂本衛氏の文によると、この真中に昔は共同浴場があったらしいが、今は影も形もない。
今もにぎわう温泉街とも、一軒宿の秘湯ともまるで雰囲気が違う。確かに忘れ去られたようなさびしい小さな温泉地だ。ゆだんの宿だけは改装したと見えて、入り口が綺麗になっているが、それでも建物本体はかなり年季が入っている。
四軒のうち、どこがいいのかさっぱり判らず、さんざん迷った末、選んだのは年月をかけて雰囲気を出した鏝字の看板を、かかげた静明舘。
入り口を入ると、おばあちゃんがのそりとあらわれる。
「お風呂に入りたいのですが、おいくらでしょう」と問うと、後ろの手書きの張り紙を差す。大人250円、子供150円。千円札を出すと、ビニール袋に入れた小銭の中からお釣りを出してくれた。
脱衣所から見える景色は、田舎の民家の庭という感じ。ドアを開けるといい感じの浴槽。もちろんベビーベッドとか、露天風呂とかは無い。
源泉は無色透明らしいが、浴槽の湯はわずかに白濁。たまに黄色っぽい湯の花が浮いているのを見ることが出来る。浴槽はタイルで、外には木の簀の子が敷いてある。
ここの匂いと味は、自分が温泉の匂いを嗅ぐことに興味を持ちだしてから、嗅いだりなめたりしたことの無い匂いと味で、なんと表現したものかよく判らない。
はっきりとした匂いと味があるのだが、言葉にしようとすると難しい。
どちらも金属っぽい感じだが、鉄ではない。銅でもない…と思う。マグネシウムはこんな匂いと味なのだろうか。
四歳の長女にこれは何の匂い?と聞いたら、葉っぱの匂いと返ってきた。確かに植物の青臭さみたいな感じもしないでもない。
味も苦いのだが、食物系の苦さじゃない。やっぱりなにがしかの金属をなめた味?
浴槽の淵に付着しているのはカルシウムだろうか。
男湯と女湯の間にもドアがあるので、ほかに入浴客がいないときは、子供達は時々出入りしていた。どちらも同じ造りらしい。
湯口から絶えることなく浴槽のサイズにあった量の源泉が投入されている。
手を加えなくても適温の湯が浴槽に満たされているというのは、考えれば凄い贅沢だ。
あがると、先に入浴していたらしい男性が、宿の方と廊下で団扇を手に涼んでいた。ノスタルジックな一幕だった。