子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★☆☆☆ 泉質★★★★☆ お湯は水を入れないと熱めかも
- 設備★★★★☆ 雰囲気★★★★★ 浴室が薄暗いので小さい子向けではないかも 静かに入っていなくてはいけない雰囲気ではある
子連れ家族のための温泉ポイント
雨に燻る古い和風建築は趣がある。
ゆるやかなカーブを描く破風。玄関わきの胴丸のポスト。
霧雨が一帯を覆うように地面をぬらしている。
ここは古いけれども高級感もあり、文人に愛されたとかそういうキャッチフレーズがよく似合う宿。
じじつこの宿は明治・大正時代の詩人 大町桂月がいたく気に入り、晩年は本籍すらもこの地に移している。
この日は一番安い本館は空きが無く、少し高い西館に予約を入れていた。
車を停めるとすぐに中から宿の人が出てきて世話をしてくれる。
チェックインの手続きは玄関入って左側のロビー。
昭和初期のお屋敷の洋室のようなレトロ感のある部屋になっていて、ここでお茶ではなくリンゴジュースが出てくるところが青森らしく頬がほころぶ。
案内された部屋も小奇麗で、窓から見える景色が真正面に小径が見えた。
なので雰囲気はいいけどあそこを歩く人がいたら部屋の中が丸見えかもと心配になったり。
部屋に用意された浴衣は、男女で柄が違い、特に女性用は華やかで気分が盛り上がる。
蔦温泉旅館のお風呂について説明すると、お風呂の場所は二ヶ所。
男女入れ替え制の久安の湯と、男女別の泉響の湯。
泉響の湯は男女それぞれなので2と数えると、計3つの浴室の全てが足元湧出泉であるというのは贅沢の極み。
夕方から夜に掛けては久安の湯は男湯になっているので私は泉響の湯に入ったが、後から思えば久安の湯の男女入れ替え設定の時間が男性にとってはかなり厳しく(男性は13~20時、女性は10時~12及び21時から翌朝8時)、特に夕食ぎりぎりにチェックインした男性たちなど、とにかく夕食は後回しにしても久安の湯に入ってしまわねばもうチェックアウトまで入る機会なしとなるので、久安の湯は20時まではずっと混雑していたようだ。
逆に久安の湯の女性専用時間は拍子抜けするほど空いていて、夜も朝風呂も結構長時間独占できた。
まずは泉響の湯から。
入ると最初に天井の高い広々とした空間に驚く。
脱衣所から階段を下りて行くのだが、薄暗い浴室は雰囲気満点。
何人か入浴客がいて、みんな静かに掛け湯槽で流したり、湯船に浸かったりしている。
ここは下から湯の湧く浴槽の他、汲み用の槽とシャワーがひとつだけ。
四角い木の浴槽に入っているお湯は熱く、チェックイン時に熱すぎる人は蛇口の水を出してその近くで入るよう説明があったが、そうしなければならないほどは熱くない。
無色透明。底の板もよく見える。板は少し隙間を空けて並べられていて、その隙間から湯が湧いている。
初めは気付かないほどだが、じっと見ていると細かい泡がところどころから登ってくる。一定ではなく、時たまぷつぷつっ、ふわふわっという感じ。そうした泡ポイントの上に陣取っていると、たまに予期せぬ大きな泡がボコッと膝の裏にぶつかってきたりして、嬉しくなる。
隙間から湯が湧いているといっても、隙間が特に熱いわけではない。
肌触りはなめらかながら、特にはっきりしたにおいなどは無い。
ただすぐに温まるので入り続けてはいられない。上がって板張りの床で休んで、またしばらくしたら入るの繰り返し。
縁の一部が低くなっていてそこからあふれたお湯が床に流れるようになっているので、そこに座って長居。
薄暗い、お風呂だけのこの空間で、何をするでもなくお湯に浸かったり出て休んだり、ただそれをしているだけの贅沢。
夕食後はようやく女湯に変わった久安の湯へ行ってみる。
こちらは泉響の湯と比べてそこまで天井が高くは無く、湯気がこもりやすい。
浴槽とは別に壁に音を立てて湯?水?の出ている所がある。後からここに魚が泳いでいたと知ったが、お風呂に入っている時は知らなかったので探さなかった。
また久安の湯は掛け湯槽というか汲み槽も格子状で、床に埋め込んであるような面白い作りだった。
お湯は泉響よりも少し熱めかな。
ここも無色透明でにおいや肌触りに強い特徴は無い。
泡は泉響よりも大きなものが頻繁に浮いてくる。
泡の出具合は不定期で、場所も定まっているようで移動していくようにも見える。
たまに鼻先で泡がはじけると、ゆでたまごのようににおいがするようなしないような。
ここも入りっぱなしではいられないので、しばらく入った後、浴槽の横の床で休むが、泡が立ち上り、湯面で崩れて波紋が広がっていくのをいつまでも見ているのは幸せだ。
この床の下で大地が生きていて、呼吸しているのが見えるような気がするから。
いつの間にか泡が静になっていた。長時間過ごし過ぎたかなと思って上がる。
湯上りの肌はパウダーをはたいたようにすべすべ。
この感触を確かめながら眠りたい。