写真を撮っている私は常に遅れるので、ようやく下で待っていた夫に追いつくと、そこは浅瀬になった海岸で、左手にはお社と、さっき見た巨大な奇岩が、正面には荒波が、右手にも林立する岩が見えた。
あまりにも荒涼とした景色だ。
足元にうねうねと海の方に向かう木道があったが、夫は左側を指差した。
今すれ違った人があっちに行けるよって教えてくれたと言う。その人って私が話しかけられたサラリーマン氏だ。何故か本人はその左手には行かず、行かれるよって教えてくれただけで木道を進んでいったようだが。
一番特徴的な大岩の方へはあちらこちらから水が染みだしている砂浜を行く。
もう少し満ち潮だったら歩けないような場所だ。
少し歩くと乾いた砂地に出て、そこからは板を渡した通路が岩と岩の間に作られていた。
簡易な板の通路を伝って岩の間を抜けると、そこにはまた非現実的な景色が待っていた。
自分が豆粒ほどの小人になって、むくむくと伸びた霜柱がそのまま石化してしまったような風景。
天気が悪く空も岩も灰色に見えるので、それが残念でもあり、また独特の寂寥感を醸し出しているようにも思え、そこに実際に立っているのが不思議な感じ。