夫は浅瀬を渡って別の岩の上にいた。
自分も追おうと思ったけど、靴に浸水してきそうだったので躊躇った末、やめにした。
ぐるりと360度回ってみる。
そんなに広い場所ではないが、見れば見るほど不思議な景色。
さっき木道の方にいた人たちもこちらにやってきた。
木道の先に小さな桟橋があって、そこに遊覧船が来ていたからたぶんその船に乗っていた人たちだろう。
木道の方へも行ってみた。
波が岩礁にあたって砕け散る。
そしてその向こうにはびょうびょうたる大海原。
ごくわずかに日が差したと思ったが、すぐに小さな青空はまた雲にかき消されてしまった。
それからが大変だった。
あれだけの坂と階段を一気に下ってきたのだから、当然それをそのまま今度は登らなきゃならないわけだが、これがもう思った以上にきつかった。
右に左に曲がる階段を昇り切る前にすでに息が上がっていた。
足ががくがくだ。
でも冷たい夫はこちらを振り返りもしないでずんずん登っていく。
親知らず子知らずじゃなくて、夫知らず妻知らず状態。置・い・て・か・ないで~。
四阿まで来ると後はゆるやかな上り坂だと思うが、これもまたきつい。どこまで続くのかと嫌になる。
途中何人かのグループとすれ違った。
行きに見た「杖」を使っている人もいた。正解だよ、あれ。
駐車場に戻るまでに何度、もう無理、足が上がらないと泣きたくなったかわからない。
ようやく車の見えるところまで着いた時には、二度とこの坂は上りたくないと思ったほど。
上り下りしたからこそあの景色に感動した部分もあるんだけど、もし晴れた日にもう一度仏ヶ浦を訪ねることがあったなら、今度は遊覧船で来るか。
さもなければせめて杖を借りようと心に決めた。
ところで仏ヶ浦でスマホで動画を撮影し、その場でインスタグラムに投稿したのだが、電波状況が悪く、いったん途中でリセットを掛けてやり直した。
この時はまさかこれがその後のインスタグラムの不調に繋がるとは思いもしなかった。