さらに車で先に進むともう一つの仏ヶ浦駐車場に着いた。
どうもここから歩けばさっき見下ろしたあの異界のような荒涼とした景色の場所に出られるらしい。
駐車場には数台の車が停まっている。
坂道を下り始めてすぐ、既に自販機以外は機能していない風の仏ヶ浦休憩所の看板を掛けた建物があって、その横に「おつかれさまです。仏ヶ浦遊歩道は、とても勾配がきついです。ご自由にこの『つえ』をお使いください。なお、使用後は元の場所へ返却願います」と説明が書かれた木の棒が何本かビールケースに刺してあった。
この時は別につえを使うほどではないだろうとたかをくくっていた。
そしてずんずんためらいも無く歩き出した夫を追って、私も坂を下りて行った。
砂利の小路は最初は緩いアップダウンだった。
道の両側に植物が生い茂っていて見晴らしは無い。ところどころに休めるようにベンチがある。
5分ちょっと道を下ると四阿が見えてきた。ちょうどそのあたりから、木々の合間からちらちらと海が見えるようになってきた。
四阿を過ぎると階段だ。
片側に木の手すりがついていて、かなり長い。少し急だ。ある程度下るとジグザグに曲がりながらさらに階段は続く。
少しずつ海の見える範囲は広くなってきた。
やがて、思わずうわぁっと声を出したくなる景色が見えてくる。
海岸から切り立つ白っぽい奇岩。
ガイドブックなどで見る仏ヶ浦の光景だ。
あと少しで階段が終わる・・・という時に、岩の下に赤い布が見えた。どうやら巨大な岩が覆いかぶさるようにしていて、にも関わらず下に開いた隙間・・・人が潜れるぐらいの・・・に祭壇が作られていて、お地蔵さまと賽銭箱が備えてあるようなのだ。
「こりゃ登りは死にそうだな」と話しかけられて、振り向くとスーツ姿のサラリーマン風のおじさんがやはり息を切らせて降りてきたところだった。