13.鹿と餌
食堂も併設されているのだが、メニューは栃餅、お汁粉など食事と言うよりおやつのような感じだったので、昼食は外へ出てから食べることにした。
土産物屋には何故かアケビの蔓で作った花カゴや、骨董品などに混じって「鹿の餌」なるものが売っている。
鹿、いないねぇ、あの餌、どこで使うんだろうと言いながら歩いていると、ふいに風に乗って「鹿の臭い」
あっ、いたいた。
子供たちは古い家など見てもまるで面白くないらしく、ぶつぶつ言いながら歩いていたが、ようやく楽しめるものを見つけた。
柵で囲われた斜面に数頭の鹿たち。
こちらを見てもさほど興味がないらしく寄ってこなかったが、パパが鹿の餌を下げて戻ってくると遠目でもそれと判ったらしく、わらわらとみんな柵のところに近づいてきた。
餌ちょうだい、餌ちょうだいという感じにつぶらな目が訴える。
パパが餌を二人分に分けて、カナとレナに持たせた。
カナは最初怖がっていたが、レナが喜々として餌をやり始めると、真似して少しずつばらまいた。
オーストラリアの動物園で飼われているカンガルーたちは、どこもお腹いっぱいなのかあまり真剣に餌を食べてくれないけど、平家の里の鹿たちは食欲旺盛で、こぼれたかけらも綺麗に平らげてしまった。
パパは「さっき買った鹿刺しは、もしかして・・・」
あはは。