秋芳洞の中にかなり沢山観光客がいたことから考えると、ほとんどの人はこちら側から入るようだ。
でも黒谷口から入ると行程のほとんどが下り坂で楽であるだけでなく、だんだん洞内が広く荘厳な雰囲気になって、ラストに迫力の百枚皿や滝の出口があって感動するので、絶対黒谷口から入った方がいいと思うんだけどな。
後から知ったけど、黒谷口の駐車場は無料なのに、秋芳洞正面入口であるこちら側の駐車場は有料だった。
これだけでも黒谷から行く価値があるよ。出入り口は妙に寂れているけど。
ゲートを出ると数百メートルほど土産物屋の続く通りがあり、そこを抜けるとバス乗り場やタクシー乗り場があった。
黒谷口のチケットブースのお姉さんは午後のバスの本数は期待できないと言っていたけど、一応目の前に停まっているバスの運転手に聞いてみる。黒谷口へ行くバスですか?って。
すると運転手はこのバスは違うけど、端のバス停がそれで、たぶん奥に停まっている青いバスが行くと思うと教えてくれた。
そこで教えられたバス停に行き、時刻を確認すると・・・なんとあと4分で来るみたい。これはラッキー。
奥に停まっていたバスは時間になるとUターンして私たちの待つ停留所に近づいてきた。
で、でもバスの額に記された電光掲示板の行き先は「回送」なんですけどっ。
ドアが開いたので乗りかけて、一応そのバスの運転手に尋ねる。
「あのう、このバス、黒谷口に行きますよね?」
「もちろん。表示がそうなっていたでしょ?」
パパが言いにくそうに「回送って書いてありますが・・」と言うと、
「えっ」運転手はしまったという顔で慌てて機械を作動させた。表示は正しくなったようだ。でも行き先は「展望台」で、これだけ見ても「黒谷口」に寄るのか私にはわからないよー。
乗った客は私たちだけで、途中の昇降も無くそのまま黒谷口に着いた。
バスはそのまま終点の展望台に向けて走り去って、秋芳洞に入った時と変わらず閑散とした黒谷口で私たちはレンタカーまで戻って来た。
「なんか今になって晴れて来たね」
そうなのだ。秋芳洞に入る時はかなり曇って薄暗かったが、秋芳洞正面出入口のあの裂け目から出てきたとき、ものすごく外が眩しいと思ったのは、洞内が暗かったからだけではないのだ。
入る前に空全体を覆っていた雲がどこへ消えてしまったのかと不思議に思うくらいによく晴れていた。
「こういう天気の下で秋吉台の景色が見たかったよ」
「じゃ、今から見に行くか」
「えっ?」
「どうせ展望台は車で行けばすぐだよ。洞内からエレベーターで行かれた場所だよ。これから行けばいい」
そうか、そうだね。
そう思って車に乗ろうとして山側の空を見てびっくり。
「あれ!、あれ!、あれ見て!」
「!!」
空に掛かっていたのは綺麗な環水平アークだった。