12.賑わう夜のゆんたく
ナイトツアーを終えて自然学校に戻ると、もう夜のゆんたくは始まっていた。
パパはすっかりとけ込んでいて、いつものように泡盛をロックで飲んでいる。
昨夜のゆんたくも盛り上がった。
私が紙粘土シーサー作りを終えてパパのテーブルに行くと、ちょうどパパは二人の宿泊客と話をしているところだった。
男性と女性。年の頃も私たちと同じくらいか。
ご夫婦かと思ったら、それぞれ連れ合いは部屋で休んでいて片方だけでゆんたくに参加していた。
男性の方は昨日今日と、私たちと一緒にシーサーを作った子どもたちのお父さんで、やっぱり今回の沖縄旅行にクラゲ除け日焼け止めSAFE
SEAを持参したと教えてくれた。
「例のイスラエル製の日焼け止めでしょう? そうそう、うちも念のため持ってきましたよ」
女性の方は五島列島から仕事で沖縄本島に来ている人で、自分も若い頃ハブクラゲに刺されたことがあると言っていた。
「九州のビーチで遊んでいて、いきなり刺されたんですよ。他にも沢山海水浴客がいたのによりにもよって私がね。あまりの痛みに凄い悲鳴を上げて、それはもう、私の悲鳴を聞いてこうビーチで泳いでいた人たちがいっせいにざざざざーっと砂浜めがけて逃げ出したくらいで」
ジョーズ真っ青。
「傷跡は残りました?」
「若かったからそのうち消えたかな。今じゃ無理だと思うけど」
何が一番凄いなと思ったかというと、ハブクラゲに刺された経験があっても海を嫌いになっていないことだろうか。明日はダイビングしようかな、それともシュノーケルと彼女が嬉しそうに悩んでいるのを見て、カナもこれきり海に入りたくないとずっと思わなければいいなと思った。
その他に彼女は昨日、とり好に行った話をしてくれた。とり好は幻のアグー豚が食べられる店で、私たちが一昨日夕食を食べに行った今帰仁の焼鳥屋だ。。
「断然塩焼きだよねー」
「そうそう、揚げ物なんて目じゃない。やっぱりアグーの塩焼きだねー」
私も塩焼きがダントツで美味しいと思った。
「塩が違うのよ」彼女は言い出した。「アグーの塩焼きは肉だけじゃなくて塩も特別だった。カウンターで食事していたから見えたの。とり好の大将は塩焼きの時だけ特別の塩を取り出して使っていたよ。他の焼き鳥の時とは違う塩だった」
す、するどい観察。
他にも彼女は五島列島での島での暮らしなど興味深い話を沢山聞かせてくれた。
昔、ツインズという竜巻の映画を見たことがあったが、あれを地でいくような台風の話とか、とても面白い話ばかりだった。