海とビーチと
*子連れ沖縄旅行記*
魚がいる場所が判っているのにあまりそこで泳ぐことができなかったこともあり、私はちょっと不満気味だった。
パパはパパで疲れがピークに達していて口数が少ない。
なんとなくお互いにしっくりこない雰囲気が漂っていた。
しかしそれを吹き飛ばすような声をカナが上げた。
「虹色のトカゲだっ、見て見て!! すごい色だよ」
レナは見ることができた。
私は見えたような見えないような。
とにかく既に車の運転席に座っているパパを呼ぶ。
口で呼んでもよく聞こえないようなので運転席の窓ガラスを叩く。
しかし、あっと言う間に小さなトカゲはしっぽをきらめかせながら車の下に逃げ込んでしまった。
「パパ、早く見ないから逃げちゃったよ。車の下に入っちゃったよ」と怒ったようにレナ。
「判った、今、車を動かすから」
子どもたちの剣幕に押されてパパは車をずらした。
一瞬、タイヤに踏みつぶされちゃたらどうしようと思ったが、トカゲは車がどいた後の草むらにじっと身をひそめていた。
小さなトカゲは黒とベージュの縦縞模様で、尻尾が途中から虹色のグラデーションを描いて真っ青に染まっている。
自然界にこんなに金属的なカラーがあるとはびっくり。
「ホントに虹色だー」
思わず家族四人でじっと見入ってしまった。
後で調べたらこれはオキナワトカゲの幼体らしい。
日本全土にニホントカゲというトカゲが分布しているが、沖縄にいるのはその近縁種のオキナワトカゲ、バーバートカゲの二種で、ニホントカゲの全てが幼体のうちはこのような虹色の尻尾を持つという。
天然色とはとても思えない虹色の尻尾は子どもの印で、大人になると地味で目立たない褐色の尻尾になってしまう。
バーバートカゲもオキナワトカゲもレッドデータブック入りしていて、バーバートカゲは絶滅危惧II種、オキナワトカゲは準絶滅危惧種に指定されている。
後でモンパの木のRyuさんに教えていただいたが、海の近くにいたということでこれはオキナワトカゲの幼体ではないかということだった。バーバートカゲはもう少し標高の高いところに生息している。
草むらを追い回し、木に登りかけたのをぱっと捕まえたら捕まった。
ちっちゃくて大人しい。
つやつやしている。
あまり長いこと捕まえていると可哀想なので、観察したら逃がしてあげた。