22.オオコウモリの木
「ママがいけないんだよ、ホタルさんに手をぶつけたりしちゃうから」
レナが怒っているのは、最後に私がホタルをつかもうとして失敗したからだ。
Ryuさんみたいに巧くつかめず、逆にホタルをはたき落としてしまうことになってしまった。もちろんわざとじゃない。
あっ、しまった、と思ったときはホタルは下に落ちていた。
でもすぐにふわふわと飛び上がった。
「大丈夫ですよ、ホタルはぶつかっても結構丈夫なんです」
Ryuさんの言葉にホッとした。
「さあ、次は海に行きます。でもその前に、オオコウモリが沢山いるかもしれない場所に寄ってみましょう」
車は市街地に戻り、やがて大きな駐車場で停まった。
「ぼくが一人でオオコウモリがいるか先に見てきますね」
そう言って運転席のRyuさんが一人で降りた。
「いました。沢山います」
Ryuさんはすぐに戻ってきて、みんなを車から降ろした。
「コウモリはこの木の実が好きなので、今の時期は夜になると山から町に下りて来るんです」
いたいた。枝にぶら下がっている。
よく見ると結構何匹もぶらさがっている。コウモリたちは逆さになってぶらさがってこちらの様子をうかがっている。
「結構可愛い顔をしているでしょう。ほら、これを見て下さい」
Ryuさんは下に落ちていた固まりを拾って見せた。
「コウモリは食事をした後、食べかすをこんな風に吐き出すんです」
コウモリたちは時々キーキーと喧嘩をしたり、大きな羽を広げて辺りを飛び回ったりする。
「あっ、今、おしっこしたでしょう。見ましたか?」
私は飛んでいるコウモリに気を取られていたので見そびれてしまったが、みんなは見たようだ。
「おしっこするときは逆さまじゃなくなるんだよ。なんでか判るかな? うんそう、自分にかかっちゃうからね」
な、なるほどー。
「本土のコウモリは小型で、飛んでいる虫を食べます。だから飛ぶのがとても上手だね。目が見えないけど超音波で周囲を調べることができるね。
沖縄のオオコウモリは木の実を食べるから、木登りがとても上手だね。動きが猿みたいでしょ。目もちゃんと見えるんだよ」
そう東京にもコウモリはいる。
夕暮れ時に住宅地にある川のそばに行くと、街灯の明かりの回りをひゅんひゅんと飛び回っている。灯りに誘われてくる虫を狙っているのだ。そう言えばあの小柄なコウモリたちは飛ぶのがとても上手だった。
今目の前の木にぶらぶらと下がっている沖縄のオオコウモリたちはむしろ
ケアンズで見たコウモリたちに近しい種族のはずだ。
ケアンズに住むコウモリたちはバナナが大好物。農園でバナナに被せられた袋はみんな、鳥ではなくコウモリ除けだと聞いた。