16.最後のページェント
さて、本日最後のページェント。
芝居の幕はどんな風に下りるのだろう。
7階の窓から見える夕日は、はじめは取りたてて輝いているようには見えなかった。
迫る台風に、空は曇っていた。
今までのように海上に一直線に光の道を作ることもなく、空全体に最後の光を振りまくこともなく。
ただいつの間にか雲の中に太陽は沈むのだと思っていた。
傾いた日は雲のまにまに僅かに顔をのぞかせた。
濃紫の空に三本のラインが走る。
それは雲の切れ込みで、ちょうど沈みかけた太陽が竜の目のように赤く燃えてのぞいた。
ゆっくりゆっくりと日は沈む。
丸くなり、歪み、滲み、水平線に近づいた。
そして名残惜しそうに海の中に落ちた。