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美ら国訪ねて
*子連れ沖縄旅行記*

16.最後のページェント



 さて、本日最後のページェント。
 芝居の幕はどんな風に下りるのだろう。
 7階の窓から見える夕日は、はじめは取りたてて輝いているようには見えなかった。
 迫る台風に、空は曇っていた。
 今までのように海上に一直線に光の道を作ることもなく、空全体に最後の光を振りまくこともなく。
 ただいつの間にか雲の中に太陽は沈むのだと思っていた。
 傾いた日は雲のまにまに僅かに顔をのぞかせた。
 濃紫の空に三本のラインが走る。
 それは雲の切れ込みで、ちょうど沈みかけた太陽が竜の目のように赤く燃えてのぞいた。
 ゆっくりゆっくりと日は沈む。
 丸くなり、歪み、滲み、水平線に近づいた。
 そして名残惜しそうに海の中に落ちた。




 いつもならそれで終わりだった。
 マンション前の堤防は、この辺りでも知られた夕日スポットらしく、毎日6時を回るとカップルやら家族連れやら等間隔に座り、日没を待っている。
 いつも空は晴れていても、海の上ぎりぎりには雲があることが多く、みんな太陽が沈みきる前に三々五々と帰っていく。
 今日はみんな帰らなかった。
 本当のショーはこれからだったのだ。

 夕日が沈みきっても、いつものようにすぐに夜空は降りてこなかった。
 空は、太陽が落ちた辺りを中心にいつまでもピンク色だった。
 そしてその色は消えるどころか益々強さを増し、まさに太陽が落ちた場所を中心に放射状の黒い筋が走った。
 空一面に広がった雲がスクリーンになり、もう水平線の下に隠れた太陽の光を反射しているのだ。
 空は益々赤く燃えた。
 幾本もの光の筋がグラデーションになり、海を彩った。

 沖縄最後の夕日。
 最後の最後までありがとう。
 7階から降りて外に出ると、名護に来た初日に夕食を食べた居酒屋の入り口で、会社帰りらしい女の子三人が、並んでめいめい海を向き、携帯のカメラで夕日を撮影していた。
 海の上の茜空が完全に消えたとき、既に日没から20分以上が過ぎていた。






7-17.台風の進路へ続く


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