15.カナの憂鬱
しばらくたって・・・。
カナだけぽつんと戻ってきた。
シュノーケルとマスクを外して砂遊びを始める。
「どうしたの?」
「・・・シュノーケル、もういい」
パパとレナはまだ戻らない。
海の方を見やると、パパの横にぷかぷかとレナの背中が浮いているのが見えた。
ようやく戻ってきたパパは、興奮したようにレナは凄いと教えてくれた。
「平気で何分も水中に顔をつけて泳いでいるんだよ。でもって魚を見つけると、さかなさかなとか叫びながらどんどん追いかけていくの。管をくわえているから管の出口からぼこぼこと「さかなさかなー」とかって聞こえて来るんだよ」
そりゃあ、可笑しい。
まあレナはミコマスケイでも顔こそつけないまでも平気で何十分も泳いでいたからなぁ。
プールでもまるでラッコかカモノハシみたいだし。
天性のシュノーケラーなのかも。
対する姉のカナは、管に水が入ってくるのが嫌なのか、もうシュノーケルはしたくないと言う。
お魚見えた? と聞いても、見えたんだか、見えなかったんだか、はっきりした返事をしない。
こりゃあカナはこれきりシュノーケルをしないかな。
あれほど練習したのに。
飲み物やトイレはさっきの駐車場まで戻らないと無い。
かき氷とカルピスを買ってきた。
どちらも300円。かき氷は適正価格かなと思うけど、カルピス300円はちょっと高い。
今朝の天気が嘘のように暑い。
汗をかいても一瞬で乾きそう。
乾くといえば子供たちのワンピース。
噴水でぬれたのをパラソルの上に干しておいたらすっかり綺麗に乾いてしまった。
子供たちとパラソルの下で休んでいたら、パパが空いたシュノーケルセットをつけて海の方へ泳ぎに行ってしまった。
シュノーケルにすっかり夢中になったレナが、「もう一度お魚、見に行きたい」と言ったけど、もうひとつのシュノーケルセットが無いと私もつきあえない。
パパの帰りを待つことにした。
「パパ、遅いよ。レナ早くお魚見に行きたかったんだよ」
子供用のマスクと管をつけたパパは、ごめんごめんとレナに謝り、それから思いもかけないことを言った。
「シュノーケルって面白いな」
でしょー。
ロウアイルズでも
ミコマスケイでもシュノーケルしたいしたいって言う私のことを笑っていたくせに。
結局三人で二つの子供用シュノーケルセットをかわるがわる使って、何度も海の中をのぞいた。
夕方になってくると、色鮮やかな魚は姿を消したが、その代わりに小さな魚の群がいくつも横切っていった。
子供たちが砂と海と珊瑚で作った白いお城も、夜になる前には満ちてきた潮に流されてしまうだろう。