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鳴子温泉巡り旅

11.美味しい温泉は誰のもの-あすか旅館






 「次は同じ中山平でも単純泉にご案内しましょう」
 屋代さんはとにかく案内する温泉をチョイスすることがまた楽しくて仕方ないようだ。
 色、臭い、肌触り、それら温泉の特徴を単調にならないようにあえてバラエティ豊かに選んでいる。さらに各々の旅館の空いている時間帯などを見計らって案内してくれたので、ほとんどの旅館では貸切状態で入浴することができた。
 個人でガイドブックなどを頼りに選んだのではとてもこうはいくまい。
 「鳴子では、ほとんど掛け流しなので湯口にコップを置いているようなところはあちこちにありますが、きちんと保健所の飲泉許可を取り付けているところは一ヶ所しかありません。あすか旅館というところです」





 また屋代さんはあすか旅館への道々、飲泉所に日参する困った輩についても教えてくれた。
 源泉を所有していて飲泉許可を取り付け、基本的にあすか旅館に泊まったり入浴したりするお客様のために自由に源泉の飲める飲泉所を設けたのはあすか旅館だ。
 そしてフロントに申し出れば誰でも自由に源泉が汲めるようにしたのもあすか旅館だ。
 ペットボトルはもちろんポリタンクも可だ。ただし一応三つまで。
 しかしその善意を都合良く受け取り、自分のことだけに使おうとする人がいるという。
 「とにかくね、軽トラックでやってきて、ポリタンク10個とかそれ以上汲んで行くんだよ。生活用水に使っているとしか思えないね」
 「はぁ・・・」
 しかし私たちがあすか旅館に着くとポリタンクを積んだ軽トラックが飲泉所に横付けされており、今まさに透明な源泉がホースを通じて汲まれていくところだった。
 到着前に屋代さんはペットボトルか何か無いですか? と聞いてきた。
 くららさんが持っていたのでそれを屋代さんに預けてあった。
 屋代さんは車から降りると真っ直ぐ軽トラックの方に向かっていき、手にした空のペットボトルを見せた。
 やりとりは聞こえない。ただ相手の男性は見るからに不機嫌そうな顔を向けてよこす。
 後から屋代さんに聞くと、ちょっとこのペットボトルの分を汲ませてほしいと頼むと、自分のポリタンクに積み終わるのに3時間掛かるからと言われたのだそうだ。
 屋代さんは私たちに、建物の中でも汲めますからと玄関から入るよう即した。
 そのとき軽トラックの男性が、「そうだよ、中でも汲めるんだよ」と吐き捨てるように言ったのが聞こえて、流石に呆れてしまった。自分の温泉でもあるまいに。

 中にも飲泉所があり、ステンレスの洗面台と、その隣にコップを備え付けた冷水サーバが置かれていた。
 洗面台の蛇口からは源泉そのままの熱い湯が、冷水サーバからはよく冷やした源泉が出るようになっている。
 「どうですか?」
 冷えた源泉を飲んでみた。
 爽やかな味。自然のほのかな甘みのようなものもあって、本当に美味しい。
 「感動的」
 そうでしょうと言うように屋代さんはにっこりした。




■左 あすか旅館のロビー、何故か熊の剥製が・・・ ■右 館内の飲泉所、源泉そのままと、冷やしたものと両方飲める



 あすか旅館を出ると、まだ軽トラックの男性は黙って源泉を汲み続けていた。
 3時間かかるとうそぶいていたから、まだまだここに居座るつもりだろう。
 外で蛇口を全開にしていると、中の飲泉所のお湯もあまり出なくなるのだそうだ。
 しかし昼間ひたすら温泉を汲むのに費やしていたら、自分の時間がもったいないんじゃなかろうか。


もくもくとポリタンクに源泉を汲む厚かましい男性、しかもこういう人は一人二人じゃないという




2-12清澄な美人湯-星の湯旅館へ続く


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