◆◇桜の古都巡り◇◆
奈良観光旅行記
あちこちで写真を撮りながら漕いでいる私は遅れがち。
娘二人は時間が足りないということもあって猛スピードで漕いで行く。
レンタルした自転車の一団とすれ違ったので何となく気になって左手を見ると何かがある。歩いている観光客の姿が見える。
思わず自転車を停めて大声で娘たちを呼んだ。
「おおーい!! ここ、ここ、こっち」
まさにかなり離れたカーブを曲がろうとしていた二人がようやく気付いた。
もう一度呼び、大きくジェスチャーしながら自分がいる場所を指す。
ちょうど下り坂でスピードが出ていたところを逆に一所懸命登ってくる。
「なになに?」
「ここ、ここ、チェックポイントの一つじゃないの?」
自転車を降りてみると道端に柵で囲まれた巨石があって数人の観光客が取り巻いているのが分かった。
表示板を見ると、これが鬼の雪隠のようだ。
ぐるりと裏に回ると一部を直方体に切り抜いたようなシンプルだけど人工的な巨石であることがわかる。雪隠(トイレ)と言われてもピンとこないけど。
「通り過ぎちゃったじゃないよ」
「えー、だって鬼の雪隠のより手前の右側に鬼の俎(まないた)の遺跡があるはずだから、右側ばかり見て走っていたんだもん」
すると通りすがりの観光客のおじさんが、俎はすぐそこだよと教えてくれた。
雪隠が道沿いにあるのに対し、俎は道沿いに目立たない石段があってそこを昇ったところにあったのだ。位置的には本当に雪隠の斜め向かいぐらい。自転車も雪隠前に停めて歩いて移動した。
鬼の俎は竹林に囲まれたスペースに置かれた平たい長方形の岩だった。
鬼の雪隠同様明らかに人工物なのだが、単なる何かの土台がそこだけ岩なので残ったようで、これまた俎と言われてもなぁーと身も蓋もないことを私は思ったが、すぐ後ろに来た若いカップルの男性は、料理のまないたとトイレをセットで考えるってスゲーよなとしきりに感心していた。ふむ。