6.とにかく玄関を掘らないことには・・・
「こんにちはー」
「こんにちは、すいませんね、入れなくて」
確かに玄関は半分ほど雪に埋まっている。
赤い小型除雪機を操りながら、青い作業着の若井さんがにこにこと挨拶を返してきた。
「今年の雪は酷くてね、年内二度目なんですよ、この雪下ろしは」
通常は1、2月に降る量の雪が、もう12月後半で嫌になるほど降ったという。
「13、14、15日だったかな、降らなくて、後は1日あまり降らない日があって、それ以外はもう毎日毎日降りっぱなしですよ。今日ようやく晴れました」
見上げると、スキー場では淡灰色だった空は、今は水色に晴れ上がっていた。
屋根の上の雪は1メートルぐらいあろうか。
たっぷりと重そうに積み重なっている。春の雪と違い真新しくぴかぴかだ。
若井さんの降ろした雪というのは玄関の軒の処だけで、二階の屋根の部分はまるまる残っている。これは明日にでも人をお願いして降ろしてもらわないと自分だけでは無理だと若井さんは言った。
「何しろ家が五軒もあるでしょう。毎日どこかの雪下ろしをして、それで終わっちゃう」
貸民家みらいは、1号館、2号館、3号館、4が無くて5号館と四棟有り、さらに自宅を入れて五軒だろうか。
毎日これでは本当に大変だ。
若井さんは除雪機で道から玄関までの雪をどかし、通路を作っていた。
見かねたパパもスコップをふるい、玄関前の雪をかきはじめた。
何しろそれをどうにかしないと、家の中に入れないのだから。
子供たちはもう車を降りて雪で遊んでいる。
しばらくたって、ようやく玄関前の雪が払われた。
玄関は最初から細く開いている。鍵も何もかかっていないのだろう。みらいはいつもこんな感じだ。