上の駐車場に車を入れていると、その間にぞろぞろとスーツ姿の男女の集団が坂を上ってきた。
引率者を除いて何となく職場の一年生といった雰囲気。
パパが地元の役所の新人研修みたいなものじゃないか?と言った。
その集団は私がさっき立神岩を撮ろうとした小さな展望所を通り過ぎ、上の駐車場よりさらに上に登って行く。
まだ新しい石灯籠が等間隔に両側に並ぶ舗装された坂道は、どことなく墓所をイメージさせた。
坂道は石段に続き、さらに登ると見晴らしの良い場所に出た。
中央に花の捧げられた殉難鎮魂之碑があり、「戦艦大和などの御霊に捧ぐ」と刻まれていた。
そこは岬の突端にある公園の、立神岩とは反対側の海、西側をのぞむ崖の上だった。
にわかに日はかげり、海の上には遠く雨の近づく気配が。
急に肌寒い風が吹いてきた。下を見下ろすと白い波しぶきが上がっている。
ここは太平洋戦争末期、戦艦大和率いる第二艦隊が米軍機と交戦、沈没した海域に最も近い地として設けられた展望所だった。
道の両側に立ち並ぶ灯篭は遺族が奉納したものだった。
気が付くとスーツ姿の新人たちは見学を終えて立ち去っていた。
雲の間から日が差して、遠くの海の一部をスポットライトのように照らした。
そしてそれもまたいつの間にかまた分厚い雲に覆われて消えてしまった。