◆◇夏休み函館紀行◇◆
母娘函館観光旅行記
元町配水場は上下水道を管理する函館市企業局の管轄する施設で、冬季をのぞき日中は6.4ヘクタールの敷地が公園として市民に開放されている。
重そうな扉は開け放たれていて、ちょうどベビーカーを押す女性が入っていくところだった。
じぐざぐにゆるい坂を登ると、古そうなレンガ造りの建物と縁を青く塗った白壁の建物と、それからその向こうに白い柵が見えた。
なんのことはない、さっきチャチャ登りから来て立ち入り禁止で越えられなかったあの柵の所だ。
元町配水場はただっぴろい芝生の公園のようだった。少し進むとさっき立ち入り禁止で越えられなかった柵の反対側に出た。
レンガ造りの建物には薄れかけた文字で「元町配水場管理事務所」と書かれた札が下がっている。
私たちがしげしげとその建物を見ていると、管理事務所の人とおぼしきおじさんが出てきて、「宝探しかい? 最後の宝はあの石段を登ったところにあるよ」と教えてくれた。
緑の芝生に立つ最後の立札「八」にはこう書かれていた。
『ここは日本人が初めて造った上水道施設です。
我々外国人技師から技術を吸収し
持ち前の勤勉さと勤労でここを造り上げたのです。
コングラチレーション! ここがラストステージだ!
さあ後ろを振り返ってごらん!
この景色、この町の魅力こそ君達の本当の宝物だ!!
そう! 人類の宝だぜぇぇぇ!!!!』
外国人技師ニコラスの台詞になっている(誰だ?ニコラスって)
しかもニコラス、文章の途中からテンション変わり過ぎ!
でも知ってた。
この景色が函館の宝だって。
息切らせて山上大神宮まで登ったあの時から。
もう知ってた。
この宝探しがキーワードを探す旅なんかじゃなくて、ガイドブックに載らない知る人ぞ知るビューポイントを巡る旅なんだって。
コングラチレーショーン!!
私たちはこの景色を手に入れた。
思い出に刻んだ。
函館配水場から見下ろす景色は、今までの函館湾側の海ではなく、くびれの反対側、青空の下は亀田半島側の海と街並みと遠くの山だった。
こうして宝を探して三日間函館の街を歩き回った私たちは、最後にこの景色を手に入れた