みなさん、こんにちは。ようやく旅は3日目にさしかかります。
「ダンナ、何かコメントは?」
「いや、別にない。早く完成させろ!」
「…」
9月3日(火)
スイスに着いて3日目の夜が明けた。まず走っていって窓の外を見る。
…き、昨日と変わらない。雨こそ降っていないがあたりは真っ白だ。
心のどこかでは、きっと奇跡が起きると信じていた。目が覚めれば嘘のような青空が広がっていると…。
パンフレットの写真を信じて、そのままの景色が見えるのだと思ってツアーに参加し、ずっと天気が悪かった人の話はたくさん聞いていたけれど、私たちだけは違うと思っていた。私たちが行く日だけは晴れるに違いないと…。みんなどこかでそう信じていた。…でも現実は厳しかった。
今日はユングフラウヨッホに登る予定だった。ユングフラウヨッホといえばスイスだけでなくヨーロッパ周遊のツアーなんかでも必ずと言っていいほどハイライトとしてついてくるところだ。でもけっこう登っても何も見えない日があるらしい。今日なんてとっても危険だ。
落ち込みつつある気分に少しだけ希望の綱があるとすれば、それは…。
がたんがたん…と、もうおなじみになった金属音がする。急いでバルコニーに飛び出せば、ミューレン行きのケーブルカーが線路にしがみついて登って行くところだ。昨日は何回見ても誰も乗っていなかった。ミューレンへ運ぶ物資だけがケーブルカーの後ろについている荷物置き場に乗せてあった。それが今朝はお客さんがいる。服装から見ても観光客だ。この時刻にミューレンへ行く宿泊者もないだろうから、あれはシルトホルンへ向かう客に違いない。
…と、いうことは、上は晴れている可能性もあるってこと?
もうひとつは、ケーブルテレビだ。私たちの部屋はテレビ付きだ。昨日、ダンナがヨッホに設置してあるカメラでまわりを撮しているケーブルテレビのチラシを見つけてから、チャンネルのどこかにあると信じて探している。昨日は見つからなかったが、今朝はそれらしいのがあった。ふいに画面にリギ山の頂上の風景がリアルタイムで映った。も、もしやこれでは!!
リギ山頂は…薄ぼんやりと白かった。雲の中だ。画面は次々とスイス各地の様々な展望台からの眺めを映し出す。リギからスイスを時計回りに回っているのか、気がつくと中央スイスからアローザ、ダボスなどグラウビュンデン州の観光地に移っている。シュクオールには笑った。右肩に地名のロゴは出ているのだが、あとは白一色だ。右も左もなんっにも見えない。
しかし、やがてカメラがヴァリスに移ると…、おおっエッギスホルンが晴れている。アレッチ氷河がくっきりだ。これは、もしかするともしかするぞ。
しか〜し、どうしてベルナーオーバーラントが出ないのだぁ。
と、思ったら、最後にロートホルンのロゴがっ。
本当に最後だった。一巡して次はまたリギだったから。運が悪くてたまたまロートホルンが過ぎたところから見だしたらしい。
で、問題の天気だが、ロートホルン山頂は、雲を突き抜けている。下は雲海だが、山上はきれいに晴れているらしい。いける、いけるぞーっ
「ロートホルンて何処?」とダンナ。
「ブリエンツ。ほら、SLの走ってるとこ」と私。
「ああ〜! …近所??」
「そう近所!、近所!」
早速準備を始める。朝食を食べて、あったかい格好をして、さあ、出発だ。
ははは、ダンナがせかすので、朝食の場面が抜けてしまいましたね。次回のタイトルは、「クライネシャイデックの奇跡の巻」です。お楽しみに。