Zermatt page 5
本当の奇跡は天気ではなく、このメジャーなルート上でほとんど人に会わなかったことだと思います |
歩いても歩いても、人っ子一人いない。 天と地に二人だけ。 前にはマッターホルンがそびえ、振り返るとモンテローザの上にぎらぎらと太陽が燃えているばかり。 |
地上の星か、銀あざみ。 大地に張り付くように生き、まぶしく輝く。 |
私たちのために道は続く。 正面にダンブランシュ。右にオーバーガーベルホルンとウンターガーベルホルン。 |
やがて、ふいに背後から人のざわめきが聞こえてきた。 天上界から、人界に帰ってきたのだ。 小さな石造りの礼拝堂を過ぎると、リッフェルベルグの駅。 午前中の日差しを浴びた駅の周りには、いつしか、沢山の観光客があふれていた。 みんな、どこにいたのだろう。 何故誰にも会わなかったのだろう。 あのとき確かに、山は私たちのためにあった。 さあ、あの陽のふりそそぐテラスで、一休みしようよ。 |