** ケアンズと森とビーチの休日 **
ローズガムズの宿泊施設はそれぞれ独立した9棟のツリーハウスからなっている。
9棟は木立の間に距離を置いて点在するように建っていて、互いに見ることはできない。
渡された地図の通り森の中を進むと、キャンプ場のコテージのようなものが木に隠れるようにあった。
実のところ、宿泊料金が高い割には随分と質素に見えて心配になってきた。
さっき受付をした母屋が素晴らしいのはDiscoverの広告やウェブサイトの画像を見ても想像が付いていた。
でも問題は泊まるツリーハウスの方だ。
個々のツリーハウスも母屋と同じ様な樹上の眺めが見えるかどうかも判らないし、広さや雰囲気だってどうだか判らない。
もし日本のキャンプ場や貸別荘でありがちな、ごくごく普通の家だったらちょっとがっかりだなと思いながら車を降りた。
ツリーハウスの入り口前まで三角屋根が張り出していて駐車スペースになっている。
パパは屋根付き駐車場があってもここに来るまでの道がダートだからどっちにしろ車は泥だらけであんまり意味は無いのではと苦笑した。
受付では1号館と言われたが、入り口のドアには「Cockatoo(オウム)」と家の名が書かれていた。
パパが本当にここか判らないから開けてみてと鍵を渡してきたので、それを差し込むとドアが開いた。
入って直ぐ左手に広いお風呂。右にダブルベッドの寝室。
正面にリビング。お約束のクラシックな暖炉もある。
リビングの右手には三方を窓に囲まれたキッチンがあり、キッチンの後ろにはダイニングテーブル。さらに後ろに階段。
そう、さっきの母屋をまさにミニチュアにしたように同じ作り。
窓側は吹き抜けになっていて天井が高く、一部が二階建てになっていて二階の天井は三角屋根そのままの形。
二階にも上がってみよう。
屋根裏部屋のようなそこにはダブルベッド一つとシングルベッドが二つ。
階下のベッドルームも同様だがどことなくアジアンリゾートをイメージさせるくすんだ赤とオレンジを基調にしたファブリックが使われている。ベッドの上には白い蚊帳が吊してあって、たぶん実用的なものなんだろうけど何となくロマンチック。
そう、確かに豪華さは無いかもしれない。
でもこれは凄い家だ。
ナチュラルで楽しくてクラシカルで子供の頃に憧れていた秘密の隠れ家のような雰囲気と、大人の遊び心が両方揃っている。
都会派のゴージャスリゾート好きには決して向かないが、元々アウトドア志向の私たちにはこれ以上の環境は無いかと思われた。