19.心を繋ぐボード
ミッションビーチの桟橋に戻ると、奥さんがアジア人のご夫妻はクルーズ会社に何か返金されていた。
もしかしたらベダラ島追加の返金なのかな。
天気が悪かったからベダラ島行きオプションは催行されなかったのかもしれない。
あの何でも前向きに楽しんでいるご夫婦なら、きっとベダラ島行きを希望したんじゃないかと思うので。
少し雨が降ってきた。
お二人は送迎車をウォンガリングのキャラバンパークで降りていった。
もしかしてキャンピングカーで旅しているんだろうか。
パパが少し話をしたら、ゴールドコーストから来たと教えてくれたそうだ。
リタイヤして、この広い大陸を夫婦で旅して回れたら最高だろうな。それもあんなに夫婦で仲良さそうに。
いくつになっても無邪気でポジティブな奥さんと、それをにこにこと見守っているご主人。こんな風に年を取れたらいいな。
ちょうど送迎車がウォンガリンガ・アパートメントに到着したときは雨がやんでいた。
「グッバイ」
「サンキュ」
恰幅の良い運転手にお礼を言って部屋に戻れば、いきなり轟音とともに激しい雨が降ってきた。
ああ良かった。
やっぱり私たちは、最後までスコールに追いつかれずに済んだのだ。
眠っているレナをベッドルームに運ぶと、いつの間にかカナが入り口にメッセージボードを置いていった。
ボードに書かれた言葉は
「やっていません」
やっていません?
何を?
たぶん、レナに見せると言った魚を今夜は作らないという意味だろう。
レナが眠ってしまったので・・・