14.ヤドカリ集合住宅
午前中よりさらに潮は引いていた。
満潮時には海の中になるだろう場所は、浅い水たまりみたいになっていた。
お世辞にも綺麗な景色とは言えない。
地図でマギマギと書かれた岬の向こうまで、ずっとその水たまりみたいな干潟が続いていたので、歩いて行かれるのかと思って歩き出してみたが、すぐに断念せざるを得なかった。
砂浜の砂はすぐ終わり、その先延々と続いているのは泥の海だった。
まるで粘土の上を歩いているように足が取られる。
一歩踏み出すごとに、サンダルの裏がねばねばの泥に張り付いて全然進めない。
それに泥がサンダルについて真っ黒になってしまった。
やぁめたやめた。
もういいや。ここで休んでいよう。
雨はいつの間にかやんだが、空はもう今日は晴れる気がないようだった。
ダンク島、思い描いていたのと全然イメージ違った。
もし空が真っ青に晴れ渡っていて、海が満潮だったら、ここの景色も全然違ったように見えるんだろうか。
ふと足下を見ると何か動いているものがいた。
つまみ上げたらそれは小さなヤドカリだった。
それに干潟の水たまりにはもっと小さなムツゴロウみたいな魚もいる。
もうリゾートビーチに来たと思わず、干潟の生き物観察に来たことにしよう。