2.ダンク島へ向かう朝
九日目 5月6日(金)
雨の音が聞こえると思った。
今日はダンク島に行くつもりなのに、昨夜の雨がまだやんでいないのかと思った。
パパは今朝ももう起きている。
「・・・雨?」
「違うよ、スプリンクラーの音」
なんだ・・・。
「毎朝5時になると庭のスプリンクラーが動き出すんだよ。それも動く前にピーっていう音がするんだ。たぶん近くを歩いている人をぬらさないように警告音を出すんだと思う」
早朝5時のスプリンクラーが、実は毎朝パパの目覚ましがわりになっていたのだった。
さらに5時20分になると、衛星放送で日本のNHKニュースが始まる。これを見てから朝のビーチに出かけるのが彼の日課だった。
今朝のビーチも雲が多い。
雨は降っていないが、東西南北見回して、空全面に浮かぶ雲。
青空はぽつりぽつりとわずかな雲の切れ目に。
日の出とともに海は沈んだ赤紫色になり、雲はルネッサンス期に描かれたミケランジェロの天井画のように水色とオレンジ色が入り交じった繊細な色合いになる。