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ケアンズの南を目指せ **ビーチ&ファームステイ**

10.ミラミラ




 と、これで終われば良かったのだが、まだもうちょっと続きがある。

 支払いをカードで済ませようとしたら、シンディが一度引っ込んで、それから困った顔で出てきた。
 機械の調子が悪くてカードの手続きが取れないという。
 こちらも現金の持ち合わせがないし、困った困ったとみんなで悩む。
 何しろ今日は日曜日なので銀行が開いていないのだ。
 「・・・明日でも明後日でも銀行で降ろして、ミッションビーチから払いに戻ってくるとか」
 「うーん・・・」
 シンディがいい手を考えついたようだ。
 何だかよく判らなかったが、彼女についていくことにした。

 行き先がミラミラだということは判った。
 ミラミラはファームから7キロ離れた最寄りの町だ。
 シンディの運転する車が前を走っている。
 助手席にセイラの金髪が見えた。
 出発前、ロッキーがぐずぐず言っていると思ったら、それは彼が留守番を申しつけられたかららしかった。
 「あれってもしかしたら、さっきクリークを渡ったトラック?」
 「まさか」とパパ。
 「クリークを渡ったやつはナンバープレートがついていなかったよ」
 そ、そうか。流石にあのトラックは農場内専用か。 


ミラミラへ向かう道・・・ぽっかりと白い雲が道の上に浮かぶ


 ミラミラまではすぐだ。
 シンディの車はミラミラの中心地、ミラミラホテルの前で停まり、それを見てパパはようやくシンディの考えていることが判った。
 「ミラミラホテルはシンディの知り合いで、ミラミラホテルでカード決済をして、後でミラミラホテルからアイカンダファームに返金してもらうつもりなんだ」
 な、なるほど。
 シンディとパパがミラミラホテルに入っていき、私と子供たちが残された。
 セイラは焼けたアスファルトもものとはせず、裸足のまま車から降りてきた。
 そして、道ばたのプランターに咲いていた花をぷちっぷちっとちぎって、それを差し出した。
 お別れの花なの?
 どうもありがとう。
 ・・・でもこれって、ちぎっちゃいけない花のような気がする。
 ま、いいか。

 雲は決して少なくないが、もう今日は雨が降るという気がしない。
 それは昨日までに比べて空が高く、空気が乾いているからだった。
 昨夜の星空を境に、雨期が明けたのかもしれない。
 今日はきっと、あの干しっぱなしだったシンディの洗濯物も乾くことだろう。


左ビクトリアビターのマークがついたミラミラホテル

セイラが最後にくれたお花

あのとき道向かいにあった公園と大きな木
セイラはもっと花をつもうと道を渡りたがっていた
あの日の別れの思い出とともに、心に刻まれた風景





4-11.Waterfall Circuit-ミラミラ滝


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