3.虹に始まり虹に終わる旅
私たちの乗る飛行機は、ケアンズ発成田行きQF167便。
ケアンズ空港を12時10分に発つ予定。
パパの立てた予定はこう。
ケアンズは素通りして、空港もいったんは素通りして、空港よりちょっと先のスミスフィールドに寄る。
スミスフィールド・ショッピングセンターは朝8時ぐらいから開いているだろうから、そこで朝食を食べ、速攻で土産物を買い、9時過ぎにはショッピングセンターを出てガソリンスタンドでガソリンを入れる
そして遅くとも9時半から10時ぐらいには空港に到着してレンタカーを返却する。
だからケアンズ市内も空港も寄らずに真っ直ぐキャプテンクックハイウェイを走った。
湿度は高いが雨が上がると嘘のように気分が晴れてきた。
スミスフィールド・ショッピングセンターはケアンズ近郊で最大級のショッピングセンターだ。
ウールワース、コールズなどのスーパーマーケットや、Kmartといったディスカウントの大型店舗の他、ファーストフード、パン屋、ドーナツ屋、衣料品店、子供服、銀行、宝石屋にギフトショップ、本屋、床屋、眼鏡屋などありとあらゆる種類の店が入っている。
ショッピングセンターのあるスミスフィールドはちょうどキュランダ方面へ続くケネディ・ハイウェイの入り口にもなっていて、大きなラウンドアバウトがある。
車窓に広がる鬱蒼とした熱帯雨林の景色を見ながら、パパが言った。
「10日前の朝も、こうして空港からスミスフィールドへ向かうこの道を走ったんだよな。オーストラリアの旅で一番わくわくするのは、旅が始まって、現地について、最初にレンタカーを走り始めたそのときなんだよ。何が待っているんだろう、どんなことがあるんだろうって・・・ちょうどあの日も、ここで確か虹を見たんだ」
虹を・・・
そう言って二人で山側に目を移したとき、それはもう、運命としか思えないものが目に入ってきた。
虹だ・・・。
あの日と同じ場所に大きな虹が架かっている。
太古の深い緑を背景に、完璧な弧を描いて。
そうだ、あの日もちょうど同じ時間にここを走っていた。
同じように雨が降った後で、同じように日が射してきた。
この虹を見せるために今朝の雨は降ったんだ。
カナもレナも窓に張り付いて虹を見ている。
虹はどんどんくっきりとしてきて、
「あっ、二本になった」
気が付くと虹は二重に架かっていた。
「凄い凄い」
しかもそれで終わりじゃなかった。
「虹の内側にも色が見える」
信じられない。
なんと内側の主虹の更に内側に七色のカラーがはっきりと見え、さらに外側の副虹の更に外側にごくうっすらともう七色見えている。
まるで虹が四本あるみたいだ・・・。
こんな光景、見たこと無い。
これはこの大陸からのプレゼント。
オーストラリアからの最後のプレゼント。
そしてまるで虹のゲートをくぐるように、車はスミスフィールドのショッピングセンターに到着した。