17.ダンク島からの船はついに来なかった
7時半。
パパが花火が見えると呼びに来た。
急いで階段を駆け下りると、ちらっと海上に大きな花火が上がっているのが見えた。
早く早くと思ったけれど、ビーチに着いたときにはもう花火は終わっていた。
「でも一応見えただろ?」
「写真には撮れなかったけどね」
今の花火はダンク島から上がっていた。
ロラリーの言っていたライトアップした船と関係あるんだろうか。
花火はじっくり見られなかったので、せめて船の方は見逃さないようにしようと、8時前にはワインを手にビーチへ降りていった。
昼間と違って満潮で、波がすぐそこまで迫ってきている。
暗いのでよく見えないが、うっかり砂浜を踏み出すと足をすくわれそうだ。
波打ち際のベンチに座って、船を待つことにした。
今までずっとひと気の無かったウォンガリンガの隣の豪邸に、今夜は灯りが灯っている。
週末なので誰か泊まっているらしい。
豪邸の照らす灯りで、波間がオレンジ色に光っている。
寄せては返し、寄せては返し・・・
二人っきりで暗い夜の海とダンク島にちらちらと見えるリゾートの灯りを見ている。
長い長い10日間だった。
楽しい時間はあっと言うまだなんて言うけれど、凝縮されたここでの時間はむしろとても長く感じた。
今こうして波の音を聞きながら夜風に吹かれていて、明日現実世界に帰ることが信じられないようだ。