12.最後の青空
マッサージが終わったので、プールサイドに降りてみた。
プールではカナとレナとそれからロラリーの娘さんが泳いでいた。
金髪でスレンダーな彼女は9歳。
学校が終わるとよく管理棟にやってきてパソコンで遊んだりしている姿を見ていた。
アイカンダパークのセイラと比べると、もちろん年も違うのだがもっと垢抜けていてはにかみやだ。
「途中からカナとレナの声が聞こえなくなっただろ?」
「うん・・・聞こえている間は喧嘩せずちゃんと遊んでいるんだなと安心していたんだけど、ぷっつり聞こえなくなった」
「せっかくだからBGMは波の音だけにしてやろうと思って、海岸へ連れ出していた」
そりゃお気遣いどうも。
明日は朝早く出発するから、今日のうちに精算を済ませたいとパパはウェンディに伝えた。
「今日はロラリーは?」
「ビーチにいるわよ、呼んで来るから待ってて」
ほどなくしてロラリーも管理棟にやってきた。私たちはロラリーとウェンディの二人が揃っているところを初めて見た。
ロラリーはやってくるなり、「どう? リラックスできた?」と私に聞いた。
「ええ、そりゃもう」
「気に入ってもらって良かったわ」
パパが今朝ウォンガリンガの周りを歩いて描いた見取り図を取り出した。
「ここの敷地はこんな風でいいのかな」
「ええそうよ、もしかしてあなたは建築家?」
「まさか」
単に次に泊まるならどの部屋がいいかなと考えて作ったんじゃないのかな。
彼はとにかくこのアコモを気に入っている。
もう今まで泊まったオーストラリアのアコモの中でダントツ。次に泊まるのも絶対ここと心に決めているほどに気に入っている。
たぶんウォンガリンガに泊まるために、我が家は来年もミッションビーチに来るだろう。
それから今朝作った折り紙セットを渡した。
「ワン、ツー、スリー・・・・エイト」
順々に小さくなる鶴を見て、ロラリーもウェンディも目を丸くして「クレバー」と言ってくれた。
そして最後に重ね箱をロラリーの娘さんに開けてもらって、中から「フロッグ」と言ってカエルを取り出してみせた。
こんなに喜んでもらえると、折り鶴という特技があって本当に良かったと思う。
日本では鶴なんて珍しくもないけれど。
ロラリーが、全部作るのに何時間ぐらいかかったの?と聞いてきた。
「30分かな」
目の前でささっと一羽折りあげてみせる。
「Wow」