5.20ドル分の幸せ
ぐるぐると回って海の側まで来た。
去年マーケットの喧噪を聞きながら遊んだブランコと、青い海に突き出した桟橋が見える。
ここからの景色が
ポートダグラスで一番好きかもしれない。
カナが次に足を止めたのは、鳥の鳴き声がする小笛を売る店だった。
竹を切って穴を開けてバーを突っ込んだような簡易な笛を、売っているおじさんは器用に操り本物の小鳥そっくりに鳴らす。
小鳥の小笛は太目、中くらい、細いのと三種類あり、他にアヒルと郭公の鳴き声を出す専用の笛がある。
一つ6ドル、4本セットになっているのが20ドル。
小鳥好きのカナはもう夢中。ピーヨロロロロロピヨロピヨロとおじさんが鳴らすのを真剣に聞き入っている。
レナは笛よりおじさんが片手間にやる毛虫みたいなのが指の間をはい回る手品の方が気になるようだ。
小学一年生のカナは、最初7ドルで6ドルの笛は買えないかと思った。
だって1ドル足りないでしょうと残念そうな声で言う。
あのね、持っているお金の方が多いんだよ。笛は買えるよ。1ドルお釣りが返ってくるはずだよ。
ぱあっと顔が明るくなった。
早速買いに行く。
レナは手品の毛虫がほしいと言ったがこれは却下。
二人とも小笛にさせた。
レナは中くらいの、カナは細いのを選んだ。